昨今の物価上昇を受け、多くの会社員が賃上げへの関心が集まっています。
しかし、いざ会社と賃上げ交渉をする場合「どのように進めればよいかわからず、ためらってしまう」というケースが少なくありません。
そのまま、諦めてしまう人もいるくらいです。
だからこそ、交渉を成功させる意味でも、感情に訴えるのではなく客観的な根拠に基づいた論理的な主張が必要不可欠です。
この記事では、賃上げ交渉に臨むための具体的な準備や、交渉を切り出すのに効果的なタイミング、そして上司に納得してもらうための伝え方を解説します。
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INDEX
そもそも賃上げとは?2種類の昇給方法を解説

賃上げ交渉を検討する前に、まずは昇給の仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
昇給には大きく分けて2種類の方法があります。
- ベースアップ
- 定期昇給
代表的なのが、ベースアップと定期昇給の2種類です。
まずは、そもそも賃上げとは何かを知るために、2種類の昇給方法を詳しく解説します。
会社全体の給与水準を引き上げる「ベースアップ」
ベースアップとは、企業の業績向上や経済情勢の変化などを背景に、従業員全体の給与水準を一律で引き上げる制度のことです。
これは個人の成績や勤続年数とは無関係に、給与テーブルそのものが改定されるため、全従業員の給料が底上げされます。
近年、物価上昇に対応するために支給される「インフレ手当」も、一時的ながらベースアップの一種と見なせるでしょう。
労働組合が春闘などで会社側と交渉する賃上げは、主にこのベースアップを指します。
従業員の生活水準の維持や向上に直結し、働く意欲を高める効果が期待されるため、雇用されている側・雇用している側どちらにとっても魅力的な選択肢の一つです。
個人の成果や勤続年数に応じた「定期昇給」
定期昇給は、年齢や勤続年数、個人の業務成績評価に基づいて、毎年決まった時期に給与が増額される仕組みです。
多くの企業で正社員を対象として導入されており、個人の成長や会社への貢献度が給与に反映される点が特徴です。
昇給額は、会社の給与規定や人事評価の結果によって個人差が生じるものの、少なくとも努力が反映されるというのはわかりやすいです。
なお、ベースアップが全従業員を対象とするのに対し、定期昇給は個人の頑張りが直接的に報われる制度となっているため、日々の業務で成果を出すことが、定期昇給額の向上につながっていきます。
今こそ会社員が賃上げ交渉に踏み切るべき3つの理由

賃上げ交渉をすべきかどうか迷っている方もいるかもしれませんが、次の理由を考えると必要に応じて賃上げ交渉しておくのがおすすめです。
- 物価の上昇によって実質的な手取りが減っているため
- 人手不足で優秀な人材の市場価値が高まっているため
- 政府が企業に対して積極的な賃上げを求めているため
ここからは、今こそ会社員が賃上げ交渉に踏み切るべき3つの理由について詳しく解説します。
物価の上昇によって実質的な手取りが減っているため
食料品やエネルギー価格をはじめ、さまざまな商品やサービスの値段が上昇を続けている今、仮に給与の額面が変わらなかったとしても物価が上昇するだけで、同じ金額で購入できるものの量は減ってしまいます。
これは、実質的な賃金が目減りしていることを意味し、生活水準の維持が困難になる可能性を示唆しているのです。
そのため、現在の生活レベルを保つ、あるいは向上させるためには、物価上昇率を上回る賃上げが不可欠です。
現在の状況を踏まえると、賃上げ交渉はあくまでも「生活防衛」という観点から行う正当な根拠となり、交渉の場で説得力を持つ理由となります。
人手不足で優秀な人材の市場価値が高まっているため
多くの業界で人手不足が深刻化している今、人材の確保と定着を重要な経営課題と捉えている企業も少なくありません。
特に、専門的なスキルや豊富な経験を持つ優秀な人材の獲得競争は激化する一方です。
このような状況下では、従業員それぞれの市場価値も相対的に高まります。
企業側も、貴重な人材の流出を防ぐために、賃金を含めた待遇改善に対して前向きに検討せざるを得ません。
だからこそ、自身のスキルや実績が社外でどのように評価されるかを把握した上で賃上げ交渉に臨めば、有利な条件を引き出しやすくなります。
むしろ、現在の雇用環境は、労働者側にとって交渉の好機といえる状況です。
政府が企業に対して積極的な賃上げを求めているため
政府は、経済の好循環を生み出すことを目的に、企業に対して持続的な賃上げを強く要請しています。
この動きに連動し、賃上げを実施した企業に対して税制優遇措置(賃上げ促進税制)なども講じられているのが昨今の動向です。
そうした社会全体の潮流は、企業が賃上げに対して前向きな姿勢を示す後押しとなっているといっても過言ではありません。
経営者側も、政府の方針や世論を意識せざるを得ないため、従業員からの賃上げ要求を無下に扱うことは難しいです。
結果的に、個人が賃上げ交渉を行ううえでの強力な追い風となり、話し合いのテーブルに着きやすい雰囲気となっています。
賃上げ交渉を成功に導くための事前準備

思いつきで賃上げ要求をしても会社側を納得させることは困難なため、賃上げ交渉は感情論で訴えるのではなく、客観的な事実に基づいたロジカルな準備が不可欠です。
ここでは、賃上げ交渉を成功に導くための事前準備について詳しく解説します。
自分のスキルや経験の市場価値を客観的に把握する
まずは、自分のスキルや経験が労働市場でどう評価されるのかを知ることが重要です。
転職情報サイトに掲載されている同業種・同職種の求人情報を調べてみて、求められるスキルと給与水準を確認してみてください。
自身の経歴を登録してスカウトを受けたり、転職エージェントに相談して年収査定を受けたりするのも有効な手段となるでしょう。
例えば「自分のスキルセットを持つ人材は、他社では月給が5万高い」といった具体的なデータがあれば、交渉における強力な根拠となります。
会社の経営状況や業界の給与水準をリサーチする
交渉相手である自社の経営状況を把握することも欠かせません。
企業の公式ウェブサイトで公開されている決算短信や有価証券報告書などを確認し、業績が上向いているのか、利益は出ているのかをリサーチします。
業績が好調であれば、賃上げの原資がある可能性が高いです。
また、業界団体の発表やニュース記事から、業界全体の給与水準や賃上げの動向を調べておくことも有効です。
会社の支払い能力を考慮した現実的な要求額を設定することで、交渉がスムーズに進みやすくなります。
これまで会社に貢献してきた実績を具体的に整理する
会社が昇給を判断する上で重視するのは、従業員がどれだけ利益に貢献したかどうか。
そのため、単に「これまで頑張ってきたんだ」といった曖昧なアピールではなく、具体的な数値を用いて実績を示す必要があります。
例えば「〇〇プロジェクトのリーダーとして、売上を前年比で15%向上させた」「業務プロセスを改善し、年間で約50万円のコスト削減を実現した」など、誰が聞いても納得できる定量的な成果をリストアップしましょう。
具体的な実績さえあれば、賃上げ要求の説得力を飛躍的に高めるための根拠となるのではないでしょうか。
希望する給与額と納得感のある根拠を用意する
これまでの準備で集めた情報をもとに、希望する具体的な給与額を決定します。
その際、なぜその金額を希望するのか、論理的な根拠を明確に説明できるように準備することが肝心です。
「自身の市場価値」「会社の業績への貢献度」「業界の給与水準」といった客観的な事実を組み合わせ、ストーリーとして組み立てることが肝心。
「これらの根拠に基づき、現在の給与から〇%の昇給、月額にして〇円の引き上げを希望します」というように、希望額と根拠をセットで提示することで、単なる要求ではなく、説得力のある提案として相手に受け止められやすくなります。
物語を駆使する手法は、非常に強力です。
賃上げ交渉を切り出すのに効果的なタイミング

入念な準備をしても、交渉を切り出すタイミングを間違えると、話を聞いてもらえない可能性があるため、会社や上司の状況を考慮し、給与に関する相談を受け入れやすい時期を狙うことが重要です。
次に、賃上げ交渉を切り出すのに効果的なタイミングを解説します。
人事評価や目標設定の面談が実施される時期
定期的に実施される人事評価面談は、給与に関する相談を持ちかける絶好の機会です。
この面談は、もともと自身の評価や処遇について話し合う公式な場であるため、給与の話を切り出しても不自然ではありません。
その期の成果をアピールし、評価に対するフィードバックを受けた流れで、来期の目標設定と合わせて給与の希望を伝えるのがベター。
事前に上司へ「評価と合わせて今後の処遇についてもご相談したい」と伝えておけば、相手も準備ができ、より建設的な話し合いが期待できます。
会社の業績が好調な決算発表の後
会社の業績が好調で、利益が拡大している時期は、賃上げの原資が確保しやすいため、交渉が通りやすいタイミングです。
特に、決算発表で増収増益が報告された直後は、社内もポジティブな雰囲気に包まれており、経営陣も従業員への利益還元を検討しやすい心理状態にあります。
会社の成長と自身の貢献を結びつけ、「会社の業績向上に貢献した一員として、成果を給与にも反映してほしい」というロジックで相談を持ちかけることで、説得力が増します。
会社の景気が良い時を狙うのは、交渉の基本戦略です。
担当プロジェクトで大きな成果を出した直後
自身が中心となって進めたプロジェクトが成功したり、個人の営業成績が目標を大幅に上回ったりした直後も、絶好の交渉タイミングです。
自身の会社への貢献度が具体的かつ明確で、上司の記憶にも新しいため、成果と報酬の連動を主張しやすくなります。
例えば、「先日完遂した〇〇プロジェクトの成功を受け、今後のモチベーション向上のためにも、給与についてご相談させていただきたく存じます」といった形で切り出すことが考えられます。
成果が評価されているタイミングでの相談は、上司も前向きに検討してくれる可能性が高いです。
【例文あり】上司に納得してもらう賃上げ交渉の伝え方

高圧的な態度や感情的な物言いは、相手の態度を硬化させ、交渉を決裂させる原因になりかねないため、賃上げ交渉は伝え方が非常に重要です。
ここからは、上司に納得してもらう賃上げ交渉の伝え方についてまとめます。
まずは面談の時間を設定してもらう
給与という重要な話をするために、まずは正式な面談の場を設けてもらうのがマナーです。
廊下での立ち話や、他の業務のついでに切り出すのは避けてください。
上司に対して「〇〇さん、今後のキャリアについてご相談したいことがございますので、30分ほどお時間をいただけないでしょうか」というように、事前にアポイントを取ります。
このとき「給与の件で」と直接的に伝えるのに抵抗があれば、「評価と処遇について」といったやや広いテーマで依頼するのも一つの方法です。
例のように、相手に考える時間をそれぞれ与えることが重要となります。
日頃の感謝と今後の貢献意欲を伝える
面談の冒頭では、いきなり本題に入るのではなく、まず日頃の感謝を伝えることから始めましょう。
「本日はお時間をいただきありがとうございます。いつもご指導いただき、感謝しております」といった一言があるだけで、場の雰囲気が和らぎ、後の会話がスムーズに進みます。
続けて、「今後も〇〇の分野でスキルを磨き、さらに会社に貢献していきたいと考えております」と、前向きな意欲を示すことも重要です。
例のように、ポジティブな姿勢を見せることで、今回の相談が会社への不満ではなく、向上心の表れであることを印象づけられるでしょう。
客観的な事実やデータを用いて希望を提示する
ここから、いよいよ本題です。
事前に準備した客観的なデータを元に、冷静に希望を伝えてみてください。
その際、感情に訴えるのではなく、事実を淡々と述べるようにしましょう。
例えば「昨年度は担当プロジェクトで売上を120%達成し、利益に貢献できたかと存じます。また、現在の私の業務内容と経験年数ですと業界の平均給与水準は〇〇円というデータもございます。つきましては、現在の月給を〇円引き上げていただくことはご検討可能でしょうか」といった形で、実績と市場価値を根拠に具体的な金額を提示します。
感情的にならず、あくまで冷静に話し合う姿勢を保つ
交渉が思うように進まない場合でも、感情的になることは絶対に避けなければなりません。
「給料が低い」「〇〇さんより働いているのに」といった不満や他者との比較、あるいは「辞める」といった言葉を切り札にするのは悪手です。
こうした態度は、上司との信頼関係を損ない、交渉の余地を失ってしまいます。
あくまでビジネス上の交渉と捉え、相手の意見にもそれぞれ耳を傾け、冷静な対話を心がけてください。
仮に要求が通らなかったとしても、良好な関係を維持し、次につなげましょう。
もし賃上げ交渉がうまくいかなかった場合の対処法

次に、もし賃上げ交渉がうまくいかなかった場合の対処法についてみていきましょう。
今回昇給が難しい理由を具体的に質問する
希望が通らなかった場合は、まずその理由を冷静に確認することが重要です。
「承知いたしました。今後の参考にさせていただきたいため、差し支えなければ、今回昇給が難しい理由についてお聞かせいただけますでしょうか」と丁寧に質問してみてください。
理由が会社の業績なのか、個人の評価が基準に達していないのか、あるいは給与テーブルの上限といった制度上の問題なのか。
原因を具体的に把握することで、次に何をすべきかの対策が見えてきます。
この段階で感情的になるのは得策ではなく、次に繋げるための情報収集に徹することが難しい状況を打開する鍵となるでしょう。
次に給与が上がるための条件や目標を明確にする
昇給が難しい理由を把握したら、昇給するためには何をすべきかを具体的に確認します。
「ご説明ありがとうございます。では、次回の評価で昇給を実現するためには、どのようなスキルを身につけ、どのような成果を出せばよろしいでしょうか。具体的な目標を設定いただけますか」と前向きに問いかけましょう。
これにより、上司と次のステップに向けた共通認識を持つことが可能です。
目標が明確になれば、それに向かって努力するモチベーションが維持でき、次回の交渉時に「提示された目標を達成した」という強力な交渉材料を手にすることもできます。
難しい状況でも、次への道筋を作ることが重要です。
余裕があれば、上司とコミュニケーションを取る場も別途設けてみてはいかがでしょうか。
キャリアプランの再構築の方法

最後に、キャリアプランの再構築の方法について見ていきましょう。
隙間時間での副業に取り組む
すぐに転職を決断するのが難しい場合、副業から始めてみるのも一つの手です。
本業で培った専門知識やスキルを活かせる仕事であれば、比較的スムーズに始めることができるでしょう。
副業は、直接的な収入増につながるだけでなく、新たなスキルの習得や社外の人脈形成、自身の市場価値の再確認といった恩恵をもたらします。
会社の就業規則で副業が許可されているかを確認する必要はあるものの、収入の柱を複数持つことは、経済的な安定と精神的な余裕につながり、キャリアの選択肢を広げることにもなるのではないでしょうか。
独り立ちする
会社員という働き方にこだわらないのであれば、フリーランスや個人事業主として独立する道もあります。
むしろ、特定の分野で高い専門性やスキルを持っており、それを求める顧客がいるのであれば、独り立ちすることで会社員時代よりも大幅な収入増を実現できる可能性すらあります。
もちろん、収入が不安定になるリスクや営業から経理まですべての業務を自身で管理する責任も伴うものの、自分の裁量で仕事を進め、成果が直接収入に結びつく働き方は、大きなやりがいを感じられるはずです。
まずは、自身の適性や事業計画を慎重に検討したうえで、キャリアの選択肢として考慮するのが健全です。
まとめ

本記事のまとめとして、会社員の賃上げ交渉は、周到な準備と適切なタイミング、そして冷静な伝え方が成功の鍵を握るという点を改めてお伝えします。
賃上げ交渉は、自分の市場価値を客観的に把握し、会社への貢献度を具体的な数値で示したうえで、会社の業績が良い時期や人事評価のタイミングを狙って交渉に臨むのが効果的です。
なお、仮に交渉が不調に終わったとしても、理由を確認し、次の目標を明確にすることで、将来の昇給につなげていくことを忘れてはなりません。
また、社内での昇給が難しい場合は、副業や転職、独立といった社外の選択肢も視野に入れ、主体的にキャリアを構築していく視点が重要となるでしょう。
まずは、交渉と副業を並行して行ってみてはいかがでしょうか。
