プレオープンとは、本格的な営業開始の前に、試験的に店舗を開放することです。
店舗の新規開業を考えている事業者や担当者にとって、プレオープンはグランドオープン前の最終調整の場として非常に重要な意味を持るものと言えるでしょう。
この記事では、プレオープンの目的やメリット・デメリット、そして成功に導くための具体的な手順や注意点について詳しく解説します。
INDEX
プレオープンとは？本番前に実施する模擬営業のこと
プレオープンとは、英語の「pre（事前の）」「open（開ける）」が語源となっており、本格的な営業を開始する前に試験的に行う模擬営業のことです。
新規開業やリニューアルオープンに際し、実際に顧客を招いて店舗を運営することで、本番さながらの状況で準備状況を確認する重要な機会となります。
まとめると、最終調整の場という位置づけの模擬営業と言えます。
なお、プレオープンでは無料または割引価格で提供されることが多く、少なくともグランドオープンまでの数日〜2週間前に行われるのが一般的です。
グランドオープンやレセプションとの意味の違い
プレオープンと混同されやすい言葉に、グランドオープンやレセプションがあります。
グランドオープンとは、店舗が本格的に営業を開始する日を指し、一般のお客様を広く迎え入れる、いわば「本番」の開店日です。
一方、レセプションはグランドオープン前に行われるイベントという点ではプレオープンと同じですが、その目的や招待客の範囲に違いがあります。
レセプションは、開業にあたりお世話になった関係者やメディア関係者、友人などを招待し、感謝の意を伝えたり、お披露目をするパーティーのような意味合いが強いです。
対してプレオープンは、実際の営業を想定した人員配置やシステム、オペレーションの確認を目的とした模擬営業であり、限定された顧客を招いて行う点が異なると言えるでしょう。
プレオープンを実施する5つの目的
プレオープンを実施する目的は、グランドオープンに向けた店舗運営の質向上にあります。
具体的なプレオープンの目的は、以下の5つです。
- スタッフのトレーニング
グランドオープンと同様の体制で実際に顧客へのサービス提供を経験することで、スタッフはオペレーションの内容や手順を実体験として学ぶことが可能です。
本番の営業のように行うことで、より実践練習になります。 - 問題点・改善点の洗い出し
頭の中で組み立てた計画やマニュアルだけでは気づけない、実際のオペレーションにおける課題や改善点を発見できます。
特に、サービスの提供遅延や会計時のミスなど、具体的な問題点を浮き彫りにする絶好の機会です。 - 設備の不備・不具合の確認
調理機器や客席の環境など、設備に不備がないか、実際に使用して確認できます。
グランドオープン後に重大な不具合が発覚するリスクを軽減し、お客様に快適な環境を提供するために必要不可欠です。 - お客様からのリアルな意見収集
来店したお客様から直接、料理の味やサービスに対する率直な感想やフィードバックを得られます。
アンケートの実施やヒアリングを通じて、改善すべき点を把握し、顧客満足度向上に役立てることが可能です。 - 宣伝・広告効果
プレオープンに招待したお客様がSNSなどで店舗の様子やサービス内容を発信することで、口コミによる宣伝効果が期待できます。
特に、メディア関係者やインフルエンサーを招待することで、より広範囲への認知度向上やグランドオープン時の集客へとつながりやすいです。
以上の5つが、プレオープンを実施する主な目的と言えるでしょう。
プレオープン開催で得られる4つのメリット
ここからは、プレオープン開催で得られる4つのメリットについて見ていきましょう。
スタッフの実践的なトレーニングになる
プレオープンは、スタッフにとって実践的なトレーニングの場となります。
机上の研修やシミュレーションだけでは見えてこない、実際の顧客対応における課題や連携の必要性を肌で感じることができるのです。
飲食店であれば、注文の取り方、料理の提供スピード、お客様への声かけなど、本番さながらの環境で経験を積むことで、個々のスキルアップだけでなく、チームとしてのオペレーションの質も向上させられるはずです。
結果的に、グランドオープン時にはよりスムーズで質の高いサービスを提供できます。
店舗運営における課題や改善点を発見できる
プレオープンを実施することで、店舗運営における具体的な課題や改善点を発見できます。
例えば、店内の導線がスムーズでない、特定の作業に時間がかかりすぎる、備品の配置が非効率的であるといった問題は、実際に営業をしてみないと気づきにくいものです。
お客様を招いて模擬営業を行うことで潜在的な問題を顕在化させ、グランドオープン前に改善策を講じる機会が得られるのは、かなりのメリットです。
開業後のトラブルも防ぐことができ、より効率的な店舗運営を行えます。
お客様からのリアルな意見を収集できる
プレオープンでは、招待したお客様から料理やサービス、店舗の雰囲気などに関するリアルな意見や感想を直接収集できるでしょう。
友人や知人、協力者といった率直な意見を述べてくれる関係者を招待することで、忌憚のないフィードバックを得られる貴重な機会となります。
アンケートを実施したり、直接会話をしたりすることで、お客様の視点から見た改善点や評価されている点を把握し、グランドオープンに向けてメニュー内容の調整やサービス改善に活かすことも可能です。
オープン前の効果的な宣伝や口コミにつながる
プレオープンは、グランドオープン前の効果的な宣伝につながることもあります。
招待客が店舗の様子や提供されるサービス、料理などをSNSで発信したり、友人・知人に話したりすることで、新たな顧客層への認知度向上に貢献するでしょう。
特に、インフルエンサーやメディア関係者を招待すれば、拡散力によってより不特定多数の人に店舗の存在を知ってもらえるでしょう。
最終的に、グランドオープン時にはすでに一定の期待感と話題性が高まり、集客を有利に進められるでしょう。
プレオープン開催に伴うデメリット
ここでは、プレオープン開催に伴うデメリットについて見ていきましょう。
- 運営コストが発生する
- 招待客に悪い印象を与えることがある
- サービスの質が低下することがある
プレオープンは試験的な営業とはいえ、食材の仕入れ費用や人件費など運営コストが発生する他、無料や割引価格で提供する場合は赤字になるリスクもあります。
また、準備不足やオペレーションの不手際が目立つと招待客に悪い印象を与え、ネガティブな口コミが拡散される可能性も拭えません。
特に、SNSでの拡散力があるインフルエンサーなどを招待した際に、悪い印象を与えてしまうとかえって集客に悪影響を及ぼすことがあるでしょう。
想定以上の来客数があった場合にも、スタッフのキャパシティを超えてしまい、サービス品質が低下することがあるかもしれません。
上記のデメリットについては十分に理解し、適切な対策を講じることが重要です。
プレオープンを成功に導く準備の5ステップ
プレオープンを成功させるためには、入念な準備が不可欠です。
次の項目では、プレオープンを成功に導く準備の5ステップを紹介します。
ステップ1：開催の目的とゴールを明確にする
プレオープンを成功させるには、まず開催する目的とゴールを明確にすることが重要です。
例えば「スタッフのオペレーション習熟度向上」「メニューの最終調整」「SNSでの拡散による認知度向上」など、目的によって招待客の選定や当日の運営方法が変わってきます。
目標とする成果を具体的に設定し、それに向かってどのようなプレオープンを実施するのか、スタッフ全員で共通認識を持つことが成功への第一歩です。
目的が曖昧なまま進めると、効果的なフィードバックが得られなかったり、無駄なコストが発生したりすることがあります。
ステップ2：最適な日程と招待客のリストアップを行う
プレオープンの目的が明確になったら、次に最適な日程と招待客をリストアップします。
プレオープンはグランドオープンまでの2週間から2日前に行われるのが一般的で、1日から数日間かけて実施されるものです。
あまり期間が空きすぎると、せっかく得たフィードバックがグランドオープンまでに活かせなかったり、招待客の記憶が薄れてしまったりする可能性があるため、迅速に進めていくことが必要となるでしょう。
なお、招待客については目的によって選定基準が変わります。
例えば、オペレーションの改善が目的なら、友人や家族、開業にお世話になった関係者など、率直な意見を言ってくれる人を選びましょう。
宣伝効果を狙うなら、メディア関係者やインフルエンサー、口コミを広げてくれそうな近隣住民などが最適です。
招待状を作成する際は、プレオープンの目的や日時、場所、料金体系などを明確に記載し、トラブルを避けるためにも、有料か無料か、割引があるのかなども明記しましょう。
ステップ3：当日の提供メニューと料金体系を決める
プレオープンで提供するメニューと料金体系を決定することも重要なステップです。
グランドオープンで提供する全メニューを出すのか、それとも特に力を入れたい看板メニューに絞るのか、プレオープンの目的に応じて検討しましょう。
メニューを絞ることで、スタッフの負担軽減やオペレーションの確認が可能になります。
料金は無料にするか、通常よりも割引した「プレオープン価格」で提供するのがコツ。
無料の場合、より不特定多数のフィードバックを得やすいです。
一方で、客層が限定されることもあるため、注意が必要となります。
プレオープン価格を設定する場合は、招待客に不利益が生じないよう、事前に料金体系を明確に伝えることがコツと言えるでしょう。
提供メニューや料金体系は招待客の期待値にも影響するため、慎重に決定しましょう。
ステップ4：スタッフへの事前トレーニングを徹底する
プレオープンの成功には、スタッフへの事前トレーニングの徹底も欠かせません。
メニューの内容、オーダーの取り方、料理の提供方法、会計、お客様への接客態度など、一連のオペレーションを繰り返し練習し、スタッフ全員が共通認識を持ち、スムーズに動けるように準備しましょう。
特に、突発的なトラブル発生時の対応や、お客様からのクレームへの対処法についても、具体的なシミュレーションを行い、スタッフ一人ひとりが自信を持って接客できるようトレーニングを積むことが重要です。
プレオープンはあくまで練習ですが、お客様にとっては初めての体験であるため、本番さながらの意識を持って臨むよう、スタッフに周知徹底することをおすすめします。
ステップ5：意見をもらうためのアンケートを用意する
プレオープンの効果を最大限に引き出すためには、お客様からの率直な意見を収集するためのアンケートを事前に用意することが重要です。
アンケートは、料理の味や量、サービスの質、店舗の雰囲気、スタッフの対応など、具体的な項目に分けて質問を作成し、お客様が回答しやすい形式に工夫しましょう。
記述式だけでなく、選択式や段階評価などを組み合わせることで、より様々なフィードバックを得やすくなります。
なお、アンケートの回収率を上げるためには、回収ボックスを設置したり、回答してくれたお客様へのお礼の品を用意したりするのも良い方法でしょう。
お客様からの意見は、グランドオープンに向けての貴重な改善点となるため、積極的に収集し、真摯に受け止める姿勢を忘れてはなりません。
プレオープン当日に注意すべき3つのポイント
プレオープン当日は、準備してきたことを最大限に活かすための重要な1日です。
以下、3つのポイントに注意して挑むことをおすすめします。
- 売上予測を鵜呑みにしない
プレオープンはあくまで試験的な営業であり、グランドオープン後の売上をそのまま予測するのには適しません。
特別な招待客や割引価格での提供など、通常営業とは異なる条件で実施されるため、プレオープンでの売上を過度に重視したり、そのまま今後の売上見込みとして参考にしたりするのは避けましょう。 - キャパオーバーに陥らないよう招待客数を調整する
プレオープンの目的はあくまでオペレーションの確認と改善点の洗い出しです。
集客に力を入れすぎて想定以上の来客があった場合、スタッフが対応しきれなくなり、サービス品質が低下することがあります。
これでは十分なフィードバックを得られないだけでなく、お客様に悪い印象を与えかねませんので、店舗の規模やスタッフの習熟度を考慮し、無理なく対応できる範囲の招待客数に調整することが重要となるでしょう。 - ネガティブな口コミへの対策を講じる
プレオープン中に不手際があった場合、お客様がSNSなどでネガティブな口コミを発信するリスクがあります。
そうした口コミは、グランドオープン後の集客に悪影響を及ぼす可能性があるため、細心の注意が必要です。
万が一、お客様から不満の声が上がった場合は、真摯に受け止め、迅速かつ丁寧に対応することを心がけましょう。
また、良い口コミを促すために、お客様にアンケートへの協力を依頼したり、SNSでの投稿を奨励したりするのも忘れないようにしましょう。
以上のポイントを忘れなければ、プレオープンもより一層成功に近づくでしょう。
プレオープン後の反省会で改善点を次に活かす方法
プレオープンが終了したら、その効果を最大限に引き出すために、速やかにスタッフ全員で反省会を実施しましょう。
問題点が鮮明なうちに意見を出し合うことが重要です。
反省会では、接客における不手際やオーダーミス、料理の提供時間、お客様からのクレーム内容など、プレオープン中に発生した具体的な課題を一つひとつ洗い出します。
アンケートで得られたお客様の意見も参考に、客観的な視点を取り入れることが重要です。
その上で「どうすればお客様にもっと満足してもらえるか」「効率的なオペレーションにするにはどうすれば良いか」といった改善策を具体的に議論し、マニュアルの変更やスタッフの配置の見直し、備品の位置調整など、実行可能な改善策を決定します。
改善策を実行した後も、それが本当に機能しているかを確認し、必要であればさらに改善を繰り返すことで、グランドオープン時にはより質の高いサービスを提供できるようになるでしょう。
まとめ
プレオープンとは、本格営業開始前の試験的な模擬営業であり、グランドオープン成功のための重要な意味を持つものです。
この「プレ」という言葉が示す通り、本番前のリハーサルとして、スタッフのトレーニング、店舗運営上の課題発見、お客様からのリアルな意見収集、開業前の宣伝・口コミ効果という多岐にわたるメリットをもたらします。
一方、無計画にプレオープンを実施することは、費用や時間の無駄になるだけでなく、ネガティブな印象を与えるデメリットにもつながりかねません。
ゆえに、プレオープンを成功させるためには、開催目的とゴールを明確にし、最適な日程と招待客を選定するなどのステップを丁寧に進めることが不可欠です。
プレオープンで得た反省点や改善点を真摯に受け止め、グランドオープンに向けて具体的な対策を講じることで、店舗の成功に貢献できます。
まずは「プレ」の意味を理解し、万全の準備でグランドオープンに備えましょう。
