便利屋の開業は特別な資格が必要なく、比較的参入しやすいビジネスです。
一方、独立開業で事業をうまく軌道に乗せるには、事業の始め方を理解し、入念な準備を進めることが欠かせません。
そこで、この記事では便利屋を始めるにあたっての具体的な手順や必要な資格、資金、そして成功のためのノウハウについて詳しく解説します。

INDEX
便利屋の開業方法は2種類!それぞれの特徴を解説

便利屋を開業する方法は、主に個人で行う方法とフランチャイズで行う方法の2種類です。
個人での開業は自由度が魅力であり自身のスキルや経験を直接事業に反映させたい人に合う一方、フランチャイズでの開業は本部のサポートを受けることで未経験からでも安心して始められるのが魅力。
まずは両者のメリット・デメリットを理解し、自分の状況や目指す事業形態に合った方法を選択することが重要となります。
自由に事業を設計できる個人での開業
個人事業主、いわゆるフリーランスとして便利屋を開業する場合、事業を自由に行えるのが魅力と言えます。
提供するサービス内容や料金設定、営業時間などをすべて自分で決められるため、自身の理想や地域のニーズに合わせた柔軟な経営が可能です。
また、フランチャイズと異なり加盟金やロイヤリティが発生しないので、初期費用を抑えやすく、利益率も確保しやすい傾向にあります。
一方、事業に関するすべての責任を自分で負う必要があり、集客から経理まですべて自分で行わなければなりません。
ゆえに、個人での開業は、ある程度の経営スキルや特定スキルを持つ人、自己管理能力がある人にこそ合う方法と言えるわけです。
未経験でも始めやすいフランチャイズでの開業
フランチャイズに加盟して開業する方法は、業界未経験者にとって魅力的な選択肢です。
本部の確立されたブランド名やロゴを使用できるため、開業当初から一定の信頼性を得やすく、集客面で有利に働きます。
また、本部が培ってきた運営ノウハウの提供や開業前の研修、開業後の経営サポートを受けられるので、事業運営の経験がなくても失敗のリスクを低減できます。
必ず成功するとは限りませんが、個人でやるよりは始めやすいです。
一方、加盟金や毎月のロイヤリティといった費用負担が発生する他、本部のマニュアルに沿った運営が求められるなど、自由な経営はあまり認められません。
あくまでもフランチャイズは、サポート体制を重視し、安定したスタートを切りたい人におすすめの方法と言えるでしょう。
個人でやるかフランチャイズでやるか迷う場合は、具体的に経営しているイメージをしてから計画を立ててみてはいかがでしょうか。
便利屋を開業するまでの具体的な7ステップ

次に、便利屋を開業するまでの具体的な7ステップについて見ていきましょう。
ステップ1:提供するサービス内容とターゲット層を決める
まず、自身のスキルや経験、地域のニーズを考慮して、どのようなサービスを提供するかを具体的に決定してください。
便利屋の業務は多岐にわたりますが、何でも屋として漠然と始めるより、「ハウスクリーニングに特化」「高齢者向けのサポートを充実」など、強みとなる分野を明確にすることが重要です。
例えば、高齢化が進む地域では、買い物代行や庭の手入れ、電球交換といった高齢者向けサービスに需要が見込めます。
また、介護経験があれば、見守りサービスなどを付加価値として提供することも可能です。
ターゲット層を絞り込むことでサービス内容がより具体的になり、後の集客活動も効果的に行われるからこそ、初期段階で決めておくことをおすすめします。
ステップ2:具体的な事業計画書を作成する
提供するサービスとターゲット層が決まったら、具体的な事業計画書を作成します。
事業計画書は、事業の目的や目標を明確にし、事業全体の設計図としての役割を果たす重要なものです。
具体的には、事業のコンセプト、サービスメニューと料金体系、市場や競合の分析、集客方法、収支計画などを詳細に記載すると良いでしょう。
収支計画では、売上目標と必要経費を算出し、現実的な利益予測を立てることが重要です。
当計画書は、自身の事業の方向性を確認するためだけでなく、後述する資金調達の際に金融機関へ提出する重要な書類となります。
内容が具体的であればあるほど、後々楽になるのではないでしょうか。
ステップ3:開業に必要な資金を準備・調達する
事業計画書に基づいて、開業に必要な資金を算出しておくことも忘れてはなりません。
必要資金は、店舗や事務所を構えるか、自宅を事務所とするかなど事業形態で変動します。
具体的には、車両購入費や工具代などの「初期費用」と、事業が軌道に乗るまでの間のガソリン代や広告費、生活費などの「運転資金」の2種類が必要です。
まずは自己資金でどれだけ賄えるかを確認し、不足する分は資金調達をご検討ください。
安心して事業を立ち上げたい場合は、運転資金として最低でも3ヶ月から半年分の経費と生活費を見込んでおきましょう。
ステップ4:事業に必要な資格や許認可を取得する
便利屋の開業自体に必須の資格はありませんが、提供するサービス内容によっては、特定の資格や許認可の取得が法律で義務付けられています。
例えば、不用品を買い取って販売する場合は「古物商許可」、家庭ごみの収集運搬を行う場合は「一般廃棄物収集運搬業許可」といった許認可が必要です。
これらの許認可を無許可で営業すると罰則の対象となるため、注意が必要です。
別途、電気工事を行うなら「電気工事士」の資格も求められます。
まずは、それぞれ自身の事業内容をあらかじめ明確にし、どのような手続きが必要になるかを行政書士などの専門家に相談するか、管轄の行政機関に確認しておいてください。
ステップ5:仕事で使う車両や道具を揃える
顧客のもとへ移動したり、資材を運搬したりするために、車両は必須のアイテム。
特に、軽トラックは小回りが利き、ある程度の大きさの荷物も運べるため、便利屋の必需品と言っても過言ではありません。
他にも、業務に必要なものとして、脚立や台車、基本的な工具セット(ドライバー、レンチ、メジャーなど)は最低限揃えておくべきです。
提供するサービス内容に応じて、高圧洗浄機や草刈り機、電動工具などの専門的な道具も準備します。
一方、すべて新品で揃えると初期費用がかさむので、中古品を購入したり、あまり使用しないものはレンタルを利用したりしましょう。
ステップ6:税務署に開業届などの書類を提出する
個人事業主として便利屋を始める場合、事業を開始した日から1ヶ月以内に、管轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」、通称「開業届」を提出する必要があります。
この手続きにより、正式に個人事業主として登録されます。
また、節税効果の高い青色申告を利用したい場合は、開業届と合わせて「所得税の青色申告承認申請書」も提出しておくと安心です。
青色申告を行うことで、最大65万円の特別控除を受けられるなど、税制上の優遇措置があるからこそ、特別な理由がない限りは同時に提出しておくのがおすすめ。
なお、それらの書類は国税庁のホームページからダウンロードが可能です。
ステップ7:集客活動を始めて最初の顧客を獲得する
開業準備がある程度進んだ段階で、集客活動を開始します。
開業してから集客を始めると収入がない期間が長引いてしまう可能性があるため、準備段階から並行して行うのが理想です。
まずは地域の人々に自身の事業を知ってもらうことが重要なので、SNSやホームページを開設するオンラインでのアプローチに加え、チラシのポスティングや地域コミュニティへの挨拶回りといったオフラインでのアプローチを行うのが良いでしょう。
最初の顧客を獲得し丁寧な仕事で満足してもらうことが、口コミやリピートに繋がり事業を軌道に乗せるための第一歩となるのではないでしょうか。
便利屋の開業で必要になる資格・許可一覧

ここからは、便利屋の開業で必要になる資格・許可一覧について見ていきましょう。
中古品の売買に必須の「古物商許可」
顧客から依頼された不用品を買い取り、それを転売して利益を得る事業を行う場合には、「古物商許可」の取得が法律で義務付けられています。
この許可は、盗品の流通防止などを目的としており、無許可で営業した場合は懲役や罰金といった重い罰則が科される可能性のあるものです。
なお、申請手続きは営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係が窓口となります。
申請から許可が下りるまでには40日程度の期間を要するからこそ、不用品の買取サービスをメニューに加える予定がある場合は、開業準備の早い段階で申請手続きを進めておくことが重要です。
不用品回収を行うなら「一般廃棄物収集運搬業許可」
顧客の家庭から出る一般ごみ(不用品)を有料で回収し、運搬するサービスを提供する場合は、「一般廃棄物収集運搬業許可」が必要です。
この許可は、市町村ごとに取得する必要があり、自治体によっては新規の許可を出さないケースもあり、取得のハードルは非常に高いとされています。
そのため、大半の便利屋では許可を取得せずに「買い取った不用品(古物)」として扱うか、顧客に代わって処分場まで運搬する「お手伝い」という形を取るのが一般的です。
不用品回収を行う場合は、違法な不用品回収業者と見なされないよう、法律を遵守したサービス提供が求められます。
業務の幅を広げる「電気工事士」などの専門資格
コンセントの増設や配線工事といった電気関連の作業を行うためには、「電気工事士」の国家資格が必須です。
また、ハウスクリーニングの専門知識を証明する「ハウスクリーニング技能士」や、亡くなった方の遺品を整理する際に役立つ「遺品整理士」などの民間資格もあります。
上記の専門資格を保有していると、対応できる業務の幅が広がるだけでなく、専門性の高さを顧客にアピールでき、信頼の獲得に繋がるはずです。
結果として、高単価な依頼を受けやすくなるからこそ、自身の得意分野や目指すサービス内容に合わせて、関連資格の取得を検討すると良いです。
移動に不可欠な「普通自動車運転免許」
特定の業務に直接必要な資格ではありませんが、便利屋を営む上で普通自動車運転免許は必須と言えるでしょう。
顧客の自宅や現場へ向かう際や作業に必要な道具・資材の運搬時には必ず車を使用します。
粗大ごみの運搬や庭木の剪定枝の処分など、小型から大型まで荷物を運ぶ機会があるため、軽トラックを運転できる免許があると安心です。
なお、AT限定免許しか所持していない場合は、限定解除の審査を受けることで、マニュアル車にも対応できるようになります。
ゆえに、事業計画の段階で、どのような車両が必要になるかを想定し、免許の種類を確認しておくことが重要です。
必要に応じて、幅広い車を運転できるようにしておくとより活躍の場を得られるのではないでしょうか。
便利屋の開業に必要な資金はいくら?費用の内訳を紹介

ここでは、便利屋の開業に必要な資金はいくらか、費用の内訳について見ていきましょう。
車両や工具などにかかる初期費用の目安
初期費用の中で最も大きな割合を占めるのが、業務に使用する車両の購入費です。
新車の軽トラックであれば100万円以上しますが、中古車を選ぶことで20万円から50万円程度と費用を小さく抑えることができます。
次いで、作業に必要な工具や道具一式の購入費用がかかります。
ドライバーや脚立などの基本的な工具に加え、高圧洗浄機や草刈り機などの専門機材を揃える場合、5万円から30万円程度を見込んでおくと良いです。
その他、事業用のウェブサイト制作費、名刺やチラシなどの広告宣伝費、許認可の取得費用なども初期費用として考えておくのが良いでしょう。
これらの費用は、工夫次第で削減することも可能なだけに、いかに抑えられるかを考えておくと良いのではないでしょうか。
ガソリン代や広告費などの運転資金の目安
運転資金は、開業直後で売上が安定しない時期の事業運営を支えるために欠かせません。
主な内訳としては、車両のガソリン代や駐車場代、継続的に行う広告宣伝費、電話やインターネットなどの通信費、損害賠償責任保険などの保険料が挙げられます。
上記の経費は月々10万円から30万円程度かかることが想定されるので、万が一開業から数ヶ月間売上がゼロだったとしても事業を継続できるよう、最低でも3ヶ月分できれば半年分の運転資金を準備しておくのが理想です。
後々、資金繰りに困らないよう余裕を持った資金計画を立てておきましょう。
運転資金が足りなくなる状況に備え、売上以外の資金調達方法も考えておいてください。
自己資金が不足している場合の資金調達方法

便利屋の開業では、自己資金だけで必要な資金を賄えないケースも珍しくありません。
その場合、公的な融資制度や補助金・助成金を活用して資金を調達するのが良いです。
創業期の事業者は民間の金融機関からの融資が難しいことがあるものの、補助金や助成金の中には利用しやすいものもあります。
ここからは、自己資金が不足している場合の資金調達方法について見ていきましょう。
日本政策金融公庫からの創業融資
日本政策金融公庫は、政府が100%出資する金融機関であり、中小企業や小規模事業者の支援を目的としています。
特に、これから事業を始める創業者向けの融資制度が充実しており、中でも「新創業融資制度」は無担保・無保証人で利用できる優れた資金調達方法として知られています。
民間の金融機関と比較して金利が低く設定されており、返済期間も長く設定できるため、創業期の事業者にとって利用しやすい制度です。
融資を受けるためには事業の将来性や返済能力を示すための詳細な事業計画書の提出が求められるものの、うまく申請が通れば有利に事業を進めることが可能です。
地方自治体が窓口となる制度融資
制度融資は、地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して提供する融資制度です。
事業所の所在地がある都道府県や市区町村が窓口となり、創業者や中小企業が金融機関から融資を受けやすくするためのサポートを行ってくれます。
自治体が利子の一部を負担する「利子補給」や信用保証協会に支払う保証料を補助してくれる制度があるので、日本政策金融公庫の融資よりもさらに有利な条件で借り入れできる場合も珍しくありません。
一方、制度の内容は各自治体によって変わるため、まずは管轄の役所の商工担当課や地域の商工会議所に問い合わせてみることをおすすめします。
手続き自体も決して難しくはないので、必ず利用すべきです。
国や自治体から受けられる補助金・助成金
補助金や助成金は、国や地方自治体が政策目標を達成するために、事業者の取り組みに対して経費の一部を支援する制度です。
融資とは別物で、原則として返済の必要がありません。
創業で活用できるものとしては、販路開拓といった事業にかかる経費の一部を補助する「小規模事業者持続化補助金」などが代表的と言えます。
一方、公募期間が定められていて申請書類の作成や事業実施後の報告が必要な点には注意が必要です。
また、申請すれば必ず採択されるわけではないからこそ、公募要領をよく確認し、計画的に準備を進めることが重要となります。
便利屋の開業で成功するための集客ノウハウ4選

便利屋事業を立ち上げ、継続的に運営していくためには、安定して仕事の依頼を獲得するための集客活動が不可欠です。
どんなに優れたサービスを提供できても、その存在が地域の人々に知られていなければ依頼には繋がりません。
ここでは、ブログの活用も含め、便利屋の開業で成功するための具体的な集客ノウハウを4つ紹介します。
ホームページやSNSで専門性をアピールする
現代において、公式ホームページは事業の信頼性を示す名刺代わりとなります。
提供サービスの詳細な内容、料金体系、過去の作業実績などを明記することで、顧客は安心して依頼を検討できるわけです。
SNSやブログも活用し、清掃のコツやDIYのヒントといった専門的な情報を発信することで潜在的な顧客との接点を生み、専門家としての信頼性を獲得するのも手です。
仮に「地域名+サービス名(例:世田谷区庭木剪定)」といったキーワードで検索した際に上位に表示されるようなSEO対策を施すことができれば、Webからの問い合わせだけで事業を安定させることもできます。
地域の特性に合わせたチラシのポスティング
便利屋の主な顧客層は地域住民であるため、古くからある手法ですが、チラシのポスティングは依然として一定の効果が期待できます。
重要なのは、ターゲットとする地域の特性を理解し、適切なチラシを作成することです。
例えば、お子さんやお年寄りがたくさん住んでいるエリアでは、文字を見やすく工夫したり、買い物代行や電球交換など身近な困りごとを記載すると良いでしょう。
一方、若いカップルやファミリーが暮らす新興住宅地では、エアコンクリーニングや家具の組み立て代行などをアピールするといった工夫をするのが良いのではないでしょうか。
チラシは過剰にポスティングすると反感を買う可能性があるものの、定期的に配布することで、いざという時に思い出してもらえるかもしれません。
便利屋のマッチングサイトに登録して依頼を得る
開業当初は実績や知名度がないため、自力での集客に苦戦することが珍しくありません。
そのような場合に有効なのが「くらしのマーケット」に代表されるような、暮らしのサービスに特化したマッチングサイトへの登録です。
これらのサイトを通じて仕事を依頼したいユーザーと直接繋がれば、開業直後からでも仕事を得られます。
報酬には手数料が発生するものの、まずはサイトで実績を積み、高評価の口コミを集めることで新たな顧客を呼び込む好循環を生み出すかもしれません。
まさに実績作りにぴったりな手段と言っても過言ではありません。
リピートや紹介に繋がる丁寧な顧客対応を徹底する
便利屋事業を長期的に安定させるためには、新規顧客の獲得以上に、一度利用してくれた顧客からのリピートや他の顧客への口コミによる紹介が重要になります。
口コミやリピートを獲得するには、ハイクオリティな作業を提供することはもちろん、依頼の受付から作業後のフォローまで一貫して丁寧な顧客対応を心がけることが欠かせません。
ゆえに、作業前のヒアリングで顧客の要望を正確に把握し、作業中も進捗を報告するなど、コミュニケーションを密に取ることが重要です。
まとめ

便利屋の開業は、特別な資格を必要とせず始められる一方で、事業として成功させるには多角的な準備と戦略が求められます。
開業方法には自由度の高い個人開業と、サポートが手厚く運営のハードルが低いフランチャイズ加盟の2種類があり、それぞれの特性を理解して選択することが重要です。
なお、事業の立ち上げではサービス内容の決定、事業計画書の作成、資金調達、必要な許認可の取得、集客活動といった具体的なステップを計画的に進める必要があります。
まずは、自身の強みと地域のニーズを分析し、効果的な集客を行うことが、事業を軌道に乗せるための鍵となるからこそ、いきなりうまくいかせようとするのではなく、失敗を経験しながら徐々に成長していくことが重要です。
