自営業を始めるには?やり方・始め方、メリット、注意点、資金調達まで徹底解説

自営業は、会社員とは異なる魅力がある働き方です。

一方で、自営業を始めたいと考えている方の中には、第一歩を踏み出すことがなかなかできず、期待と不安が入り混じっている方もいるでしょう。

この記事では、自営業の始め方から、知っておくべきメリット・デメリット、具体的な資金調達方法、そして始めるなら押さえておきたい注意点まで、詳しく解説します。

自営業とは?個人事業主やフリーランスとの違いを解説

自営業は、特定の企業や組織に雇用されず自ら事業主として事業を運営することです。

この言葉には、独立して商売を行う飲食店や小売店の経営者、一人で仕事をしているフリーランス、さらには法人を設立して会社を経営している人も含まれます。

一方、個人事業主とは税法上の区分であり、開業届を税務署に提出し、法人格を持たずに事業を営んでいる人を指します。

つまり、すべての個人事業主は自営業者ですが、自営業者が必ずしも個人事業主とは限らないわけです。

例えば、従業員を雇っている飲食店経営者は自営業ではありますが、内閣府の定義における「従業員を雇用していない」「実店舗を持たない」といった要素を含むフリーランスには該当しないことがあります。

フリーランスは、特定の企業や団体に属さず、案件ごとに契約を結んで仕事をする働き方そのものを指す言葉です。

起業を考えている人は、上記の働き方の違いを理解し、自身の事業形態を明確にすることが重要となるでしょう。

自営業を始める5つのメリット

ここからは、自営業を始める5つのメリットを見ていきましょう。

自分の裁量でビジネスを進められる

自営業のメリットは、自分の裁量でビジネスを自由にコントロールできる点にあります。

会社員のように組織の決定や上司の指示に縛られることなく、事業内容や業務の進め方、価格設定、さらには休日の取得まで、すべて自分で決めることが可能です。

こうした自由度の有無は、「自分のやりたいことを仕事にしたい」と考えて自営業を始めたい人にとって、見逃せない魅力と言えるでしょう。

働く時間や場所を自由に選べる

自営業を始めることで、働く時間や場所を自由に選べるようになります。

会社員のように決まった勤務時間やオフィスに縛られることなく、自分のライフスタイルに合わせて仕事を進めることが可能です。

自営業は、時間や場所が自由で誰にも縛られません。

具体的には、自宅やコワーキングスペースでの作業、午前中だけ働くといった柔軟な働き方が実現できるでしょう。

成果が直接収入に反映される

自営業は、自分の頑張りや成果が直接収入に反映される点もメリットです。

会社員とは異なり、自身の能力や努力次第で、収入に上限がなく高収入を目指せます。

請け負う案件の単価や受注件数によって収入が違うため、成果を上げれば上げるほど、収入アップに直結するでしょう。

自分の実力が報酬として明確に還元されるため、やりがいも感じやすいでしょう。

定年を気にせず働き続けられる

自営業は、会社員のように定年退職を気にすることなく、働こうと思えばずっと働き続けられるというメリットもあります。

自分のペースで働けるため、年齢を重ねても現役で活躍し続けることが可能です。

キャリアプランも柔軟に設計でき、長期的な視点で安心して働くことができるでしょう。

経費として計上できる範囲が広がる

自営業を始めることで、会社員では認められないような支出も経費として計上できるようになります。

例えば、事業に関連する通信費や交通費、消耗品費などが該当します。

また、事業で使用する電子契約の導入費用なども経費として削減できることがあるため、事業の幅を広げやすいです。

もちろん、所得から経費を差し引くことで課税所得を減らし、所得税や住民税の負担を軽減することも可能です。

自営業を始める前に知っておきたい4つのデメリット

ここでは、自営業を始める前に知っておきたい4つのデメリットを見ていきましょう。

収入が不安定になりやすい

自営業にとって一番のデメリットは、収入が不安定になりやすい点です。

会社員のように毎月決まった給与が支払われるわけではなく、景気や業界動向、顧客の状況、受注件数などによって収入が大きく変動することがあります。

特に、事業を始めたばかりの頃は十分な収入が得られず、生活が苦しくなるケースもあるでしょう。

筆者もフリーランスでライターを始めた頃は、収入が不安定でその日暮らしのようでした。

自営業を始めたいと考えている方は、まず収入の不安定さを理解し、事前に生活資金を確保するなどの対策を講じることが重要です。

できれば、数ヶ月は生活できる貯金を貯めてから始めることをおすすめします。

社会的信用を得るのが難しくなる場合がある

自営業を始めることで、会社員に比べて社会的信用を得るのが難しくなる場合があります。

日本では「会社員=安定」「自営業=不安定」というイメージが根強く残っており、カードローンや住宅ローンといった審査で不利になったり、賃貸契約に保証人が必要になったりするケースも珍しくありません。

ローン審査では、安定した継続的な収入が重視されるため、事業年数や所得額が問われることも珍しくないでしょう。

自営業を始めたい場合は、上記の社会的信用の側面も考慮し、信頼構築のための対策を検討しておくことが重要です。

一方、確定申告書類さえあれば賃貸物件などは普通に借りられます。

筆者も今まで賃貸物件をいくつか契約しましたが、確定申告書類を提出したおかげか、審査に落ちたことはありません。

つまり、確定申告書類は重要な審査のファクターとなるわけです。

事務作業や税務処理を自分で行う必要がある

自営業は会社員と異なり、事務作業や税務処理をすべて自分で行う必要があります。

特に、所得税の確定申告は毎年自分で行わなければなりません。

確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、青色申告は節税効果が期待できますが、複式簿記での記帳が必要となるなど簿記の知識が求められます。

一方、白色申告は簡易的な帳簿で済むため、経理の負担を軽減可能です。

開業時、税務署に開業届を提出するのと併せて、青色申告にするのか白色申告にするのかを選ぶと良いでしょう。

なお、白色申告は別途で書類の提出は必要ありませんが、青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」の提出が必要です。

もしわからないことがある場合は、会計ソフトを活用したり、税理士などのプロに相談したりして負担を軽減しましょう。

年金や保険はすべて自己管理になる

自営業は、会社員とは異なり年金や健康保険の社会保障がすべて自己管理になります。

会社員が加入する厚生年金や健康保険とは違い、自営業者は国民健康保険と国民年金に加入する義務があり、保険料は全額自己負担が一般的です。

また、雇用保険には加入できないため、失業手当のような保障も受けられません。

病気やケガで働けなくなった時の収入補償もないため、個人で所得補償保険などを検討し、万が一に備えることが重要となるでしょう。

自営業の始め方を5つのステップで徹底ガイド

次に、自営業の始め方を5つのステップで見ていきましょう。

STEP1:事業内容を具体的に決める

自営業を始めるにあたって、まず最初に行うべきは、どのような事業内容で収益を上げていくのかを具体的に決めることです。

事業を展開する上で顧客のニーズに応えることは欠かせませんが、なぜこの事業を行うのか、何を目指しているのかといった事業理念やコンセプトを明確にすることも重要となります。

扱う商品やサービスだけでなく、価格設定、ターゲット層、販売方法、集客方法など、すべて自分で決めなければなりません。

市場や競合他社の分析を行い、自分の提供する商品やサービスを顧客に選んでもらえるよう、差別化を図ることを意識すると良いでしょう。

STEP2:実現可能な事業計画書を作成する

自営業を始めるには、事業計画書を作成することが重要です。

事業計画書では事業の概要、市場分析、競合他社の調査、販売戦略といったところまで練り上げ、具体的な数値目標を含める必要があります。

上記の計画書は自身のビジョンを明確にするだけでなく資金調達の際にも必要となる重要な書類だからこそ、事業の方向性を決めるためにも丁寧に作成するようにしましょう。

STEP3:事業に必要な資金を準備する

自営業を始めるには、事業に必要な資金を準備することが不可欠です。

開業時には、店舗や事務所の開設費用、設備投資、広告費用などの初期費用がかかります。

加えて、事業が軌道に乗るまでの数ヶ月間の運転資金、自身の当面の生活費も準備しておくことが求められます。

まずは上記の費用を詳細に見積もり、自己資金でどれだけ賄えるかを確認しましょう。

もし不足分があれば、後述する資金調達方法を検討すると良いでしょう。

資金計画を立てることで、資金ショートのリスクを軽減し、安心して事業をスタートすることが可能です。

STEP4:開業届など必要な書類を税務署に提出する

自営業を始める上で、重要なステップの一つが必要書類の提出です。

個人事業主として事業を開始した場合、開業から1ヶ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」(通称:開業届)を納税地を所轄する税務署に提出する必要があります。

罰則はありませんが、所得税法で提出が義務付けられています。

また、節税効果の高い青色申告を選択する場合は、原則として事業開始日から2ヶ月以内(またはその年の3月15日まで)に「所得税の青色申告承認申請書」も開業届と一緒に提出するのがおすすめです。

上記以外にも、従業員を雇う場合は社会保険関係の手続きや都道府県税事務所への事業開始等申告書の提出などが必要になることも珍しくありません。

忘れずに手続きをするために、最初に行うべきリストを作成しておきましょう。

STEP5:事業に必要な許認可を取得する

自営業を始める際には、事業内容によっては特定の許認可の取得が必要です。

例えば、飲食店やカフェを始める場合は保健所の営業許可が、美容室や病院も保健所への届出が必要となります。

古本店やゲームセンターの営業には警察署の管轄する許認可が、旅行業を営む際には運輸局や都道府県庁への登録が求められます。

なお、許認可には「届出」「免許」「許可」などがあり、それぞれ要件や申請先、手続きにかかる手数料が異なるため、注意が必要です。

必要な許認可を取得せずに営業を開始すると処分を受けることがあるため、事前に管轄の行政機関に確認し、必要な手続きを漏れなく行いましょう。

店舗を運営する場合はレジの導入など、設備準備も並行して進めましょう。

開業資金が足りない時に役立つ資金調達方法

自営業を始めるにあたって、事業に必要な資金は賢く調達したいところです。

ここでは、開業資金が足りない時に役立つ資金調達方法について詳しく解説します。

日本政策金融公庫からの融資を受ける

開業資金が足りない場合、日本政策金融公庫からの融資が便利です。

日本政策金融公庫は、政府が100%出資する金融機関であり、個人事業主や中小企業を対象に様々な融資制度を提供しています。

最大の特徴は、比較的低金利で融資を受けられる点です。

特に、創業時向けの融資制度が充実しており、銀行などの一般的な金融機関に比べて審査に通りやすい傾向があります。

ローンの検討をする際には、まず選択肢に入れるべき一つでしょう。

地方自治体の制度融資を活用する

開業資金が足りない場合、地方自治体が提供する制度融資を活用することも有効な資金調達方法と言えます。

制度融資は、自治体、金融機関、信用保証協会が連携して提供する融資制度で、利用者の負担を抑えて資金調達ができる点が特徴です。

通常の融資よりも低金利や保証料の減免など、有利な条件でローンを組めるのが利点です。

また、返済期間が長期で設定されていることが多く、無理のない返済計画を立てやすいのも特徴といえます。

上記の制度は少なくとも地域の活性化を目的としているため、中小企業や個人事業主が利用しやすいでしょう。

まずは、お住まいの都道府県や市区町村のホームページで情報を確認し、「(お住まいの地域名)+融資」で検索してみましょう。

国や自治体の補助金や助成金を申請する

開業資金が足りない時に役立つ資金調達方法として、国や地方自治体の補助金や助成金を申請することが挙げられます。

これらの制度は融資とは異なり、原則として返済の必要がない点が魅力です。

一方、補助金や助成金は特定の目的や条件に合致する事業に対して支給されるため、自身の事業内容がその目的にマッチしているかを確認する必要があります。

申請には時間と手間がかかる場合が多いですが、返済義務がないため、積極的に活用を検討すべきです。

上記の公的な支援制度を活用することで、ローンの負担を軽減し、事業の安定化を図ることが期待できるでしょう。

クラウドファンディングで支援を募る

開業資金が足りない時に役立つ資金調達方法として、クラウドファンディングで支援を募るという選択肢もあります。

クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する方法です。

自身の事業アイデアやプロジェクトをオンライン上で公開し、共感した支援者から資金を集め、支援者へのリターンとして、商品やサービス、特別な体験などを提供する形式が一般的と言えるでしょう。

原則、返済義務がないため、資金繰りのプレッシャーを軽減できるのが魅力です。

また、事業のテストマーケティングやプロモーションとしても活用でき、認知を拡大する効果も期待できます。

自営業を始めてから後悔しないための注意点

自営業を始めてから後悔する人は、決して珍しくありません。

中には、事業計画が甘く、数年で会社員に戻る人もいるくらいです。

ここでは、自営業を始めてから後悔しないための注意点について詳しく解説します。

最低限の生活費はあらかじめ確保しておく

自営業を始めるにあたって、開業直後から安定した収益が得られるとは限りません。

そのため、事業資金とは別に、最低限の生活費は事前に確保しておくことが重要です。

開業後の収入が少ない期間も自身の生活費は発生するため、日頃から家計簿をつけるなどして毎月の生活費を把握し、数ヶ月分の生活費を貯蓄しておくと、資金計画に役立ちます。

この備えがあることで、収入が不安定な時期でも精神的なゆとりを持って事業に集中し、後悔しない自営業ライフを送ることができるでしょう。

仕事とプライベートのバランスを保つ

自営業を始める上で、仕事とプライベートのバランスを保つことも重要です。

自分の裁量で仕事を進められるため、つい働きすぎてしまい、結果としてセルフブラックと呼ばれる状態に陥ることがあります。

ゆえに、会社員のように明確なオンオフの切り替えがないため、意識的に休憩を取ったり、休日を設けたりすることが欠かせないでしょう。

まずは、仕事に没頭しすぎて心身の健康を損なわないよう適切なワークライフバランスを意識し、長く自営業を続けられる環境を整えましょう。

確定申告に備えて日々の経理管理を徹底する

自営業を始めるなら、確定申告に備えて日々の経理管理を徹底することが不可欠です。

会社員とは異なり、自営業者は毎年自分で所得税の確定申告を行う必要があるため、事業で発生したお金の出入りを正確に記録し、経営状況を客観的に把握することが求められます。

特に、節税効果の高い青色申告を選択する場合は、複式簿記での記帳が必要となるため、簿記の知識が必要です。

上記に関しては、会計ソフトを活用したり税理士に相談したりすることで、記帳や売掛金管理、確定申告書類の作成といった経理業務の負担を軽減できます。

確定申告を忘れるとペナルティが生じる可能性もあるため、日々の正確な経理管理は徹底しましょう。

筆者も毎年確定申告する度に、日頃の経理管理の重要性を痛感しています。

確定申告期間が迫ってから慌てて書類を用意しなくて済むよう、普段から1冊のファイルにまとめておくと安心です。

万が一に備えて所得補償保険などを検討する

自営業は会社員とは異なり、病気や怪我で働けなくなった際に収入が途絶えるリスクがあるため、万が一に備えて所得補償保険などの加入を検討することが重要です。

所得補償保険は、病気や怪我で働けない期間の収入を補償してくれる保険であり、自営業者の生活を守る上で大きな安心材料となります。

また、事業内容によっては、訴訟リスクや損害賠償リスクも考えられるため、事業総合賠償責任保険などの加入も検討すると良いです。

上記の保険を活用することで、自営業を始める上でのリスクを軽減し、安心して事業に専念できる環境を整えられます。

まとめ

自営業を始めることは、自分のやりたいことを仕事にできる自由な働き方であり、頑張り次第で収入アップも目指せる魅力的な選択肢です。

一方、収入の不安定さや社会的信用の得にくさ、事務作業の負担など、会社員にはないデメリットも存在します。

自営業を始めるなら、上記のメリットとデメリットを十分に理解した上で、具体的な事業計画の策定、適切な資金調達、そして開業届の提出といった手続きを計画的に進めましょう。

また、事業開始後も、安定した生活基盤の確保、ワークライフバランスの維持、そして日々の経理管理やリスク対策を怠らないようにしましょう。

まずは当記事で解説した情報を参考に、自営業という働き方への理解を深め、後悔しないスタートを切るための準備を始めてみませんか。

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#カケハシ 編集部

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