みなさんは、ボランタリーチェーンという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ボランタリーチェーンとは、複数の独立した事業者が協力関係を通じて、地域ごとの消費者のニーズにきめ細かく対応した商品やサービスを提供することを目指す組織のことです。
ただ、具体的な内容についてはよくわからない人もいるでしょう。
そこで、この記事ではボランタリーチェーンの定義と特徴、フランチャイズとの違い、加盟するメリット・デメリット、具体例、参加方法について詳しく解説します。

ボランタリーチェーンの定義と特徴
まずは、ボランタリーチェーンの定義と特徴について見ていきましょう。
ボランタリーチェーンとは
ボランタリーチェーンは「VC」と略され、英語では「voluntarychain」と表記されます。
意味を端的にまとめると、複数の独立した事業者が共通の目的を持って組織を結成し、チェーンオペレーションの仕組みを構築・活用する形態のことです。
単に集まるだけでなく、協力関係を通じて、地域ごとの消費者のニーズにきめ細かく対応した商品やサービスを提供することを目指す組織と言えるでしょう。
ボランタリーチェーンの特性
ボランタリーチェーンの特徴は、加盟店同士の横の繋がりが強い点にあります。
各店舗が同じ目的で集まり、各々が連携しながら主体的に店舗経営を行うものの、加盟店は独立性を保ちつつ本部を共同で運営するサークル状の相互関係を持ちます。
この仕組みにより、中小の加盟店同士が相互に助け合い、大企業や一極集中型システムに対抗しやすくなるわけです。
情報共有も活発に行われ、それぞれの経営戦略に役立てることが可能です。
フランチャイズとの違い
次に、フランチャイズとの違いについて見ていきましょう。
フランチャイズの仕組み
フランチャイズは、本部(フランチャイザー)と加盟店(フランチャイジー)が一対一で契約を結ぶ仕組みです。
加盟店は本部に加盟金やロイヤリティといった対価を支払い、本部の商標やサービス、経営ノウハウを使用する権利を得て事業を行います。
本部からの継続的な指導や援助を受けられるものの、店舗運営においては本部の方針に従う必要があり、加盟店が独自に経営戦略を立てる自由度は低い傾向にあります。
上記の点を見てもわかる通り、ボランタリーチェーンとは根本的に別物です。
フランチャイズとの相違点
ボランタリーチェーンとフランチャイズの違いは、本部と加盟店の関係性にあります。
フランチャイズが本部主導のトップダウン方式であるのに対し、ボランタリーチェーンは加盟店同士が主体となり本部を共同で運営するのが特徴です。
フランチャイズでは本部と加盟店が上下関係にあるのに対し、ボランタリーチェーンでは加盟店が共同出資して本部を結成するので、本部と加盟店は同等の立場になります。
このため、ボランタリーチェーンでは加盟店の裁量が与えられ、比較的自由な経営ができますが、フランチャイズでは本部が加盟店を統括し、経営指導も本部が主導します。
また、ボランタリーチェーンでは加盟店同士の横の繋がりが強い反面、フランチャイズでは加盟店間の直接的な繋がりはほとんどありません。
そうした点が、両者の違いと言えるわけです。
単純に、両者は目的も役割も別物です。
ボランタリーチェーンに加盟するメリット・デメリット
ここからは、ボランタリーチェーンに加盟するメリットとデメリットについて見ていきましょう。
ボランタリーチェーン加盟のメリット
ボランタリーチェーン加盟のメリットには、以下のようなものがあります。
- 共同仕入れによるコストを削減できる
- 加盟店同士で経営ノウハウや成功事例を共有できる
- 比較的自由な店舗運営が可能となっている
ボランタリーチェーンに加盟するメリットの一つは、共同仕入れによるコスト削減です。
複数店舗でまとめて仕入れることで、単独で仕入れるよりも商品や原材料、設備などの費用を抑えることが期待できます。
加えて、加盟店同士で経営ノウハウや成功事例などの情報を共有できるのも利点です。
ボランタリーチェーンを利用することで自社の経営に役立つ情報を得たり、新しいシステムや戦略について学んだりすることが可能となります。
その他、ボランタリーチェーンでは比較的自由な店舗運営が可能であり、地域ごとのニーズに合わせた商品展開やサービス提供を実現しやすい傾向にあります。
個性を活かした経営を行いたい事業者にとって、自由に動ける点は魅力的です。
ボランタリーチェーン加盟のデメリット
ボランタリーチェーン加盟のデメリットは、以下の通りです。
- 知名度の低さ
ボランタリーチェーンの主なデメリットとしては、まず知名度の低さが挙げられます。
大手フランチャイズと比較すると、全国的なブランド力が弱い場合が散見され、集客のための独自の努力が必要です。
また、自由な経営が可能であるのに対して、本部からの細かい経営指導やサポートがフランチャイズほど手厚くないのもデメリットと言えます。
つまり、加盟店自身が経営能力や自己管理能力を持つ必要があるわけです。
ボランタリーチェーンに加入するには入会金や会費も発生するので、運営コストについても重荷になるかもしれません。
ボランタリーチェーンの具体例
ここでは、ボランタリーチェーンの具体例について見ていきましょう。
小売業界のボランタリーチェーン
小売業界では、コンビニやスーパーでボランタリーチェーンの形態が見られるでしょう。
例えば、全日食チェーンのような食品を中心としたボランタリーチェーンが著名です。
他にも、店舗内で調理を行ったり、地域限定の商品を取り扱ったりするなど、オーナーの裁量で特色ある店舗作りを進めている事例も見られます。
山崎製パンのヤマザキショップもボランタリーチェーンの代表例として挙げられ、各店舗が独立性を保ちながら、本部からの商品供給や運営支援を受けています。
上記のような形態は地域ニーズに柔軟に対応でき、商品ラインナップを店舗側で調整できるのが特徴です。
ドラッグストア業界の事例
ドラッグストア業界でもボランタリーチェーンは存在します。
独立系の調剤薬局やドラッグストアがボランタリーチェーンに加盟することで、共同仕入れによるコスト削減が可能です。
ボランタリーチェーンに加盟することで個々の薬局ではなかなかできない大量仕入れが可能になり、医薬品のコストを抑えることが可能です。
また、加盟店同士での情報交換を通じて、地域における医薬品の需要や他店舗の経営ノウハウなどを共有し、経営戦略に活かすことも行われています。
例外として、共同でプライベートブランド(PB)商品を開発する事例も。
ボランタリーチェーンへの参加方法
最後に、ボランタリーチェーンへの参加方法について見ていきましょう。
加盟のプロセス
ボランタリーチェーンへの加盟プロセスは、運営する組織によって異なりますが、一般的な流れとしては、以下のような手順となっています。
- チェーン本部への問い合わせや資料請求を行う
- 本部担当者から詳細な説明を受けて疑問や質問を解消する
- 加盟を希望する場合は申し込みを行い、本部による審査を受ける
- 審査を通過すれば、入会金や会費の支払いを行い、正式に加盟となる
- 加盟後は、店舗システムの導入準備や商品発注ルールの説明、情報共有の方法などが案内され、本格的な運用が開始される
全体のプロセスにかかる期間はボランタリーチェーンによって異なりますが、およそ2ヶ月程度を要するのが基本的です。
成功への要点
ボランタリーチェーンに加盟して成功するためには、いくつかの重要な要点があります。
- 自身の経営方針と加盟予定のボランタリーチェーンの経営方針を擦り合わせる
- 実際の加盟店の様子を見学し、どのような雰囲気なのか把握する
- 受け身ではなく積極的に情報交換や共同活動に参加する
- 加盟店同士の横の繋がりを活かし、互いに協力し合う
なお、上記の他にも経営者自身の高い経営能力や課題解決能力が必要です。
成功するためには、加盟によるメリットを最大限に活かしつつ、デメリットを補えるよう準備を進めていくことが必要となるでしょう。
まずは、失敗しないためにもよく情報収集してみてはいかがでしょうか。
まとめ
ボランタリーチェーンは、独立した事業者が集まり、協力してチェーンオペレーションを行うことで、コスト削減や情報共有を行うビジネス形態です。
フランチャイズと比較すると加盟店の自由度がある程度担保されており、地域ニーズに合わせた柔軟な経営が可能となっています。
ただ、本部からの手厚いサポートはフランチャイズほど期待できないため、経営者自身の主体性や能力が重要となるでしょう。
他人任せで運営していてはすぐに経営不振に陥るので、まずはどのような業態で利益が出しやすいか、用意周到に進めてみてはいかがでしょうか。
