業務委託とは、業務を外部の事業者に依頼し、結果に対して報酬を支払う契約形態です。
一般的に、業務の一部をアウトソーシングする形で使用される形態で、労働契約とは異なり、業務委託の受託者は独立した立場で業務を遂行します。
そのため、依頼者の指示や統制を受けにくいのが特徴です。
この記事では、業務委託とは、メリット・デメリット、雇用や請負契約との定義の違いを分かりやすく解説します。
業務委託の意味と種類
まずは業務委託の意味と種類について見ていきましょう。
業務委託は、特定の業務を外部の個人や企業に依頼し、報酬を支払う契約形態です。
契約するパートナーは労働者ではなく、独立した事業者として扱われます。
主な種類は次の通りとなるので、併せてご確認ください。
業務委託の種類
業務委託には、請負契約・委任契約・準委任契約という3つの種類があります。
それぞれ意味合いは似ていますが、明確な違いがあるので注意が必要です。
●請負契約:製造業などで見られる契約
請負契約とは、特定の成果物や業務の完了を約束し、その成果に対して報酬を支払う契約形態です。
●委任契約:法律・金融などの分野で見られる契約
委任契約は、特定の業務遂行を依頼し、その遂行過程に対して報酬を支払う形態です。
●準委任契約:サポートやプログラミングなどの分野で見られる契約
準委任契約は、業務遂行の一部を依頼する契約で、処理過程に対して報酬を支払います。
単に業務委託と言っても複数の契約形態があるため、パートナーの状況によってどのような方式を取るか考える必要があるでしょう。
業務委託と請負契約・派遣との違い
次に、業務委託と各種契約・雇用形態との違いについて見ていきましょう。
請負契約との違い
業務委託と請負契約の主な違いは、成果物に焦点を置くかどうかです。
請負契約は、特定の成果物の納品を約束し、完了に応じて報酬を支払います。
一方、業務委託では必ずしも成果物が求められるわけではなく、業務内容の遂行に対して報酬が支払われる場合があるため、報酬形式が違うと言えるでしょう。
派遣との違い
業務委託と派遣の違いは、主に指揮命令権の有無にあります。
派遣は派遣先が直接従業員に対して指揮命令を出せるのに対して、業務委託では基本的に指揮命令権は委託先にあるのが一般的です。
要するに仕事の権限を持っている人が違うと言えるでしょう。
正社員・アルバイトとの違い
余談にはなりますが、正社員とアルバイトとの違いも見ていきましょう。
業務委託は、正社員やアルバイトとは異なり、雇用関係は成立しません。
正社員やアルバイトは労働契約に基づき企業の指揮命令を受ける労働者ですが、業務委託契約の受託者は独立した事業者として業務を遂行します。
そのため、社会保険の加入義務なども違うわけです。
業務委託は労働基準法などの適用を受けることもないため、働こうと思えば自由に働けるなど正社員・アルバイトとは根本的に違うと言えるでしょう。
業務委託のメリット・デメリット
次に、業務委託のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
メリット
業務委託のメリットは以下の通りです。
- コスト削減
- 即戦力の採用
- 業務量の変動への対応
コスト削減
業務委託は、社員を雇用するよりコストが抑えられるため、予算管理がしやすくなります。
労務管理費の削減や社会保険、労働保険も不要になるなどコストの大幅な削減が可能です。
採用したスタッフに対する細かなマネジメントも必要がないため、育成面でのリソースを割く必要性がそもそもほとんどありません。
即戦力の採用
業務委託は、特定のスキルを持つ人材を必要な時にだけ雇用できます。
ゼロから人材を育てるための費用と比べるとかなり費用対効果は良いでしょう。
ただし、業務委託の使い捨てはトラブルになるため、フリーランス新法など適切な法令を遵守することが大切です。
業務量の変動への対応
業務委託は、業務量が一時的に増加する時期に合わせて柔軟に導入できます。
例えば、季節や時期によって大幅に仕事が増える場合、リソースに併せて人材を増やして対応可能です。
必要な場面に合わせて適切な人材を充てられるため、業務量の変動にも柔軟に対応できるでしょう。
デメリット
業務委託のデメリットは以下の通りです。
- 自社にノウハウが蓄積されない
- 情報漏洩のリスクがある
自社にノウハウが蓄積されない
業務委託は、外部の専門家に頼るため、自社内にノウハウが蓄積されにくいです。
ノウハウが蓄積されないと、新入社員や中途社員が入って来ても優秀な人材が育ちません。
今後も業務委託を続ける場合は構いませんが、自社の社員も育てたいと思っている場合はノウハウを蓄積させることが求められます。
情報漏洩のリスクがある
業務委託は外部の人材が業務に関わるため、情報漏洩リスクがあります。
読み取り防止や契約書での明確な取り決めを行わない限り、リスクは常に高いままです。
万が一、業務委託のスタッフが情報漏洩をした場合、本人はもちろん企業側が損害賠償に問われる可能性も低くないため注意が必要となるでしょう。
業務委託契約書の作成方法
次に、業務委託契約書の作成方法について見ていきましょう。
業務委託契約書の主な項目と概要
業務委託契約書には、以下のような主要な項目が含まれます。
- 業務内容の詳細
- 報酬と支払い条件
- 契約期間・継続条件
- 業務に関する守秘義務
- 業務の進捗報告
- 再委託に関する条項
基本的には以上の内容を組み込んでおけば問題ありません。
業務内容の詳細には、依頼する業務の範囲や具体的な作業内容を明記します。
報酬と支払条件には、報酬額や支払期日、支払方法を明記することが重要です。
その他、開始日と終了日といった契約期間や継続条件、業務に関する守秘義務についても記載しましょう。
状況に応じて、業務の進捗報告や再委託に関する条項なども盛り込んでください。
業務委託契約書に収入印紙は必要?
業務委託契約書に収入印紙が必要かどうかは、その契約内容によって異なります。
一般的に金銭の貸借や売買契約と異なり、業務委託契約書に収入印紙は必要ありません。
しかし、万が一のトラブルを防ぐため、契約書の内容を確認し、必要に応じて収入印紙を貼付するのがおすすめです。
業務委託時に注意すべきポイント
次に、業務委託時に注意すべきポイントについて見ていきましょう。
個人情報の取り扱いについて
業務委託先に個人情報を扱わせる場合は、個人情報保護法に基づいた取り扱い規定を契約書に明記することが重要です。
業務遂行中に知り得た個人情報の取り扱いや漏洩防止策、情報廃棄の方法などを具体的に定め、委託先が厳守するよう求めます。
下請法の適用基準を理解する
下請法は、親事業者と下請事業者間の取引適正化を図るための法律です。
業務委託契約がこの法律の適用対象となる場合、報酬の支払い期間や適正な取引条件、遅延損害金についての規定を順守する必要があります。
公正な取引環境を保持するためにも、法律は遵守しましょう。
再委託に関するルールを定める
契約書には再委託に関するルールを明確に定める必要があります。
再委託を許可する場合、範囲や条件を具体的に規定し、再委託先が必要な資格や能力を持っているかを確認しましょう。
なお、再委託の場合も守秘義務や個人情報保護規定の適用が重要です
まとめ
業務委託契約は、企業が柔軟かつ効率的に専門的な業務を遂行するための有効な手段です。
しかし、その利用にはメリットとデメリットが存在し、リスクと問題点にも注意を払う必要があります。
まずは契約書の内容を明確にし、守秘義務や個人情報の取り扱いについて厳重に規定しましょう。
また、労務的な注意点や情報漏洩リスクを最小限に抑えるために、適切な対策と準備が欠かせません。
業務委託で仕事を任せる場合は、ぜひメリットとデメリットを理解しつつ、より効果的に活用できるよう工夫しましょう。