塾の経営における年収は、経営者の手腕や戦略によって変動します。
特に個人経営の場合、工夫次第では年収1000万を超えることも十分に可能です。
ただ、人によっては具体的にどれくらい稼げるのかわからない人もいるはずです。
そこで、この記事では、学習塾経営のリアルな年収相場から市場の動向、高収入を実現するための具体的な経営戦略、失敗しないための開業手順までを詳しく解説します。

INDEX
実際のところ塾経営は儲かる?市場の動向を解説

少子化の影響が懸念される昨今、子供の総数自体は減少傾向にあります。
一方で、子供一人にかける教育費は増加傾向にあり、学習塾の市場規模は拡大中です。
中でも、個々のニーズに合わせた指導への需要は拡大を続けており、オンライン指導や個別指導塾がそれぞれの市場を牽引しています。
塾の経営は、こうした市場の変化に対応し、独自の強みを打ち出すことができれば、十分に収益を上げられる事業です。
塾経営者のリアルな平均年収を公開

塾経営者の年収は、個人で開業するのか、フランチャイズに加盟するのかといった経営形態によって変わる他、生徒数や教室の規模、地域によっても収入は変動するので、一概に平均を示すことは困難です。
まずは、塾経営者のリアルな平均年収についてざっくりとまとめます。
個人経営の学習塾における年収の目安
個人経営の学習塾における経営者の年収は、300万円から700万円程度が一般的な目安とされているものの、年収の範囲については幅があります。
生徒数を順調に獲得し、経営が軌道に乗れば年収1000万円を超えるケースも珍しくはないものの、生徒から得られる月謝の総額から家賃や人件費、教材費などの経費を差し引いて利益を計算することが重要です。
ゆえに、ハイクオリティな学習指導で生徒の満足度を獲得し、安定した生徒数を確保することが収入の安定に直結するでしょう。
フランチャイズ加盟塾オーナーの年収相場
フランチャイズに加盟して塾を開業した場合、オーナーの年収相場は400万円から600万円程度とされています。
フランチャイズの場合、本部のブランド力や確立された運営ノウハウを活用できるため、未経験者でも比較的スムーズに経営を始められるのが強みです。
一方で、売上の一部をロイヤリティとして本部に支払う必要があるので、ロイヤリティ分の利益は圧迫されると理解しておくことが重要です。
集客支援や研修制度といったサポート体制が整っている反面、経営の自由度は個人経営に比べて低い傾向にあるからこそ、慎重な判断が求められます。
塾経営で年収1000万円を実現する5つの経営戦略

学習塾の経営で年収1000万を達成することは、決して非現実的な目標ではありませんが、感覚的な運営ではなく収益性を確保できるよう明確な経営戦略が必要です。
集客の仕組み作りからコスト管理、指導の質の向上、そして事業の拡大まで、多角的な視点から計画的に取り組む必要があります。
生徒が自然と集まる集客の仕組みを構築する
安定した塾経営には、継続的に生徒が集まる仕組みが欠かせません。
WebサイトやSNSでの情報発信、チラシのポスティングといった基本的な広告活動に加え、口コミやレビューによる紹介を促進する施策が重要です。
在籍する生徒や保護者とのコミュニケーションを密にし、満足度を向上させることで宣伝活動としたり、無料体験授業や保護者向けの説明会を定期的に開催して、塾の魅力を直接伝える機会を設けたりするのが、信頼獲得に繋がります。
結果的に、年収アップも狙えるようになるのではないでしょうか。
無駄をなくすための徹底したコスト管理術
収益を最大化するには、売上を伸ばすことと同時に無駄な経費の削減が必須です。
例えば、家賃や人件費、広告宣伝費といった経営における三大費用については、常に最適化を図る必要があります。
より具体的には、オンライン授業を導入して教室の必要性をなくしたり、会計ソフトを活用して事務作業を効率化したりすることでコストを抑えるのが良いでしょう。
広告費用についても、効果測定を定期的に行い、反響のない広告から費用対効果のある手法へと予算をシフトさせることも求められるのではないでしょうか。
退塾させない質の高い指導体制を整える
新規の生徒を獲得するには相応のコストがかかるので、一度入塾してくれた生徒に対して長期的に通い続けてもらうことが経営安定の鍵となります。
そのためには、成績を上げることはもちろん、生徒一人ひとりの学習意欲を引き出すような質の高い指導が必要不可欠です。
この点に関しては、講師の指導スキルを向上させる研修制度を設けたり、生徒や保護者との定期的な面談を実施したりして、信頼関係を築くことが重要です。
満足度を担保できる学習環境は、結果的に安定した収益を生み出します。
利益率を高める集団指導クラスを導入する
個別指導塾は生徒一人あたりの単価を高く設定できるものの、講師一人に対して指導できる生徒数が限られるため、売上の上限が低くなりがちです。
一方で、集団指導は講師一人といった少ない人数で多くの生徒を指導できるので、人件費を抑えられ、利益率も改善される傾向にあります。
ゆえに、個別指導をメインとしながらも特定の科目や目的(例えば定期テスト対策など)に特化した集団指導クラスを設けることで、収益構造を改善し、全体の利益率向上を図るのも良いでしょう。
事業規模の拡大で収益アップを狙う
一つの教室の経営が安定し、運営ノウハウが蓄積された段階で、事業規模の拡大を検討することも収益アップの有効な手段です。
具体的には、2校舎目、3校舎目と多店舗展開を進める方法が考えられます。
また、既存の教室でオンラインコースを新設したり、対象学年を広げたり、あるいは英会話やプログラミングといった新しい講座を導入したりすることで、新たな収益源を確保するのも良いです。
塾の経営モデルが確立できれば、事業を横展開することで収益を飛躍的に伸ばせる可能性があります。
儲からない塾経営に陥る3つの原因

次に、儲からない塾経営に陥る3つの原因について見ていきましょう。
生徒が集まらない立地やエリアを選んでいる
塾経営がうまくいくかどうかは、立地に左右されます。
ターゲットとする生徒層(小学生、中学生)が住んでいないエリアや、学校からの帰り道から外れている、交通の便が悪い場所では、どれだけ指導力がある塾であっても生徒を集めるのは困難です。
ゆえに、開業前には商圏調査を徹底し、地域の人口動態や競合塾の分布、保護者の送迎のしやすさなどを分析する必要があります。
夜間に生徒が安全に通えるかどうかも、保護者が塾を選ぶ上で重要な判断基準となるからこそ、周辺の治安や街灯の有無も確認すべきです。
競合との差別化ができていない塾のコンセプト
学習塾の市場は競合がたくさんあり、自塾の強みや特色が明確でなければ、数ある選択肢の中に埋もれてしまいます。
だからこそ「成績アップに強い」「難関校受験専門」「特定の教科に特化」「アットホームな雰囲気」など、他塾にはない独自の価値を提供できるコンセプトを打ち立てることが不可欠です。
逆にコンセプトが曖昧なまま塾の経営を始めてしまうと、効果的な集客ができず、価格競争に巻き込まれる原因となるでしょう。
指導方針やターゲット層を明確にすることが、差別化の第一歩!
どんぶり勘定になっている経費管理
売上は順調に伸びているにもかかわらず、手元に利益が残らないというケースは、経費管理の未熟さが原因となっていることが珍しくありません。
家賃や人件費といった固定費、教材費や広告宣伝費などの変動費を正確に把握せず、どんぶり勘定で経営を続けていると、いつの間にか資金繰りが悪化してしまいます。
ゆえに、毎月の収支を記録し、利益がどのくらい出ているのかを可視化することが重要です。
まずは、会計ソフトを導入したり、必要であれば税理士などの専門家に相談したりして、健全な財務状況を維持する費用管理体制を構築してみてはいかがでしょうか。
個人で学習塾を開業するための具体的なステップ

最後に、個人で学習塾を開業するための具体的なステップについて見ていきましょう。
はじめに事業計画と資金計画を立てる
開業準備の第一歩は、事業の設計図となる事業計画の策定にあります。
塾のコンセプト、指導方針、ターゲット層、料金設定、そして収支予測などを具体的に文書にまとめることが重要です。
これと並行して、必要な資金を洗い出す資金計画も立てておいてください。
具体的に、物件取得費用や内装工事費、備品購入費といった初期投資と、開業後数ヶ月分の家賃や人件費などの運転資金を算出し、自己資金で賄うのか、日本政策金融公庫などから融資を受けるのかを検討しておくと安心です。
その綿密な計画が、後の安定経営の土台となります。
指導方針や塾のコンセプトを固める
どのような生徒を対象に、どのような価値を提供するのかを決めることも重要です。
コンセプトの決定は、塾の根幹を定める重要なステップで、指導形態を個別指導にするのか集団指導にするのか、対象学年はどこまでにするのか、教科は絞るのか、といった点を具体的に決めておくとより計画的に行動できます。
例えば「地域の中学生を対象とした、高校受験専門の少人数制集団指導塾」のように明確化しておくと良いです。
上記のようなコンセプトが、他塾との差別化の基盤となり、今後の教材選定や集客活動、学習環境作りすべての判断基準となります。
生徒募集が見込める教室の場所を選定する
固まったコンセプトに基づき、教室の場所を選びます。
最も重要なのは、ターゲットとする生徒が通いやすい立地であることです。
学校や住宅街からの距離、駅からのアクセス、人通りがあって安全な道沿いか、といった点を現地で確認することでより具体的な立地選定に繋がります。
周辺の競合塾の状況をリサーチすることも欠かせません。
まずは、保護者説明会や面談スペースも考慮しつつ、十分な面積と適切な間取りで構成されている物件を中心に探すようにしてみてください。
看板の設置場所や視認性も、集客に影響を与える要素としてチェックすべきです。
教室の備品や教材を準備する
物件の契約が完了したら、内装工事と並行して、教室運営に必要な備品や教材の準備を進めます。
机や椅子、ホワイトボード、パソコン、複合機、本棚といった基本的な設備を揃える他、指導方針やコンセプトに沿った教材を選定し、必要な数を確保しなければなりません。
なお、開業当初のコストを抑えるには、中古の備品を活用したり、リース契約を検討したりするのも一つの方法です。
開業届など必要な行政手続きを済ませる
学習塾を開業するにあたって、法律で定められた特別な許認可や資格は必要ありません。
ただ、個人事業主として事業を始めるためには、管轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出することが義務付けられています。
上記の届出は、事業開始から1ヶ月以内に行うのが原則です。
他にも、節税効果が見込める青色申告を選択する場合は、「青色申告承認申請書」も同時に提出すると手続きがスムーズです。
別途、従業員を雇用するには労働保険関係の手続きも必要になります。
まとめ

塾経営の年収は、経営形態や規模、そして経営者の戦略によって左右されます。
個人経営で年収1000万円を目指すことは可能ではあるものの、実現のためには市場の動向を捉え、明確なコンセプトに基づいた事業計画を立てることが不可欠です。
ハイクオリティな指導で生徒の信頼を得ながら、集客の仕組みを構築し、徹底したコスト管理を行うことが成功には欠かせない要素となるでしょう。
だからこそ、儲からない塾に陥る原因を避け、計画的なステップを踏んで開業準備を進めるところから意識してみてはいかがでしょうか。
