探偵になるには、特別な資格や学歴が必須というわけではありません。
ただ、探偵になるためには、尾行や張り込みといった専門的な調査スキルや法律知識が求められるからこそ、仕事内容や必要な能力を正しく理解することが必要です。
そこで、この記事では探偵になるための具体的な方法から仕事内容、年収、求められる学歴や資質まで詳しく解説します。

INDEX
探偵とはどんな職業?主な仕事内容と働き方を解説

まずは、探偵とはどんな職業か、主な仕事内容と働き方について見ていきましょう。
浮気調査から人探しまで、探偵の代表的な業務を紹介
探偵業務の大部分を占めるのは、パートナーの不貞を確認するための浮気調査です。
また、家出した家族や昔の知人などを探し出す人探し、結婚相手や取引先の信用度を調べる信用調査、いじめやストーカー被害の証拠収集など扱う調査は多岐にわたります。
これらの業務を遂行する上で、探偵に必要な資格というものは法律で定められていません。
ただ、尾行や撮影、聞き込みといった高度なスキルが求められる仕事のため、探偵特有のテクニックの習得難易度は決して簡単ではありません。
国家資格は不要なものの、それ以外にも実践的な能力が問われる専門職と言えるでしょう。
探偵の働き方は主に2種類!就職と独立開業
探偵としてのキャリアは、探偵事務所への就職か独立開業かの2つが主流です。
大抵はまず探偵事務所に所属し、調査員として実務経験を積むことから始めます。
現場での尾行や張り込み、調査報告書の作成といった一連の業務を通じて、探偵としての基礎を学び、十分なノウハウと人脈を築いた後に独立開業を目指すのが一般的なルート。
独立すれば高収入を得られるチャンスもあるものの、調査業務に加えて経営や集客といった能力も求められ、すべての責任を自身で負うことになるので、慎重な判断が求められるのではないでしょうか。
探偵になるための4つの具体的なステップ

次に、探偵になるための4つの具体的なステップについて見ていきましょう。
ステップ1:探偵事務所に就職して実務経験を積む
探偵になるための最も確実で一般的な方法は、探偵事務所に就職することです。
未経験者を採用している事務所も珍しくなく、調査の補助業務から始め、先輩調査員に同行しながら実践的なスキルを学ぶことができます。
尾行や張り込み、撮影機材の扱い方、法的な知識、調査報告書の作成方法など、現場でしか得られないノウハウを給与を得ながら習得することも不可能ではありません。
最初は地道な業務ばかりで辟易するかもしれませんが、新人時代に積んだ経験は将来独立を考えている人にとって貴重な財産となるでしょう。
ゆえに、まずは求人サイトや各事務所の採用ページで募集情報を探すところから始めてみてはいかがでしょうか。
ステップ2:自分で探偵事務所を立ち上げて開業する
探偵業で十分な経験を積んだ後、あるいはまったくの未経験からでも、自分で探偵事務所を立ち上げて独立開業するという道があります。
成功すれば勤務時代よりも大幅に高額報酬を得られる可能性があります。
ただ、そのためには調査スキルだけでなく経営者としての能力が不可欠です。
集客のためのマーケティングや営業活動、事務所の運営、経理、法務など、すべての業務を自分で行う必要があるのです。
また、探偵業法に基づく公安委員会への届出も必須で、特に未経験での開業は調査のノウハウがないため、リスクには注意しなければなりません。
ステップ3:探偵学校や養成講座で専門スキルを学ぶ
探偵としてのキャリアをスタートする前に、専門的な知識と技術を体系的に学びたい場合は、探偵学校や民間の養成講座に通うという選択肢があります。
これらの学校では、探偵業法などの関連法規、尾行や張り込み、撮影といった調査の基本技術、調査機材の取り扱い、報告書の作成方法などを座学と実習で学ぶことが可能です。
それらの基礎スキルさえ身につけておけば、就職活動時に即戦力として評価されやすくなる可能性があります。
中には、卒業後の就職先を斡旋してくれる学校も珍しくありません。
一方で、受講には費用が発生するので、カリキュラムやサポート体制をよく比較検討することが重要です。
ステップ4:副業として探偵の仕事を始めてみる
本業を続けながら、副業として探偵の仕事に関わってみるという方法もあります。
探偵事務所によっては、特定の調査案件において週末や夜間だけ稼働できるアルバイトや業務委託の調査員を募集している場合があり、張り込みや尾行の補助、証拠撮影のアシスタントといった業務に従事可能です。
上記の方法なら、転職する前に探偵の仕事の現実や自分自身の適性を見極められます。
リスクを抑えながら探偵業界を体験できるからこそ、仕事に興味はあるものの、いきなり専業になることに不安を感じる人ほど副業から始めるのがおすすめです。
探偵に必須の国家資格はない!ただし「探偵業の届出」は必要

探偵に必須の国家資格はありませんが、探偵業の届出は必要です。
ここからは、探偵業の届出について詳しく解説します。
探偵業を営むなら公安委員会への届出が必須
探偵業を始めるには、個人・法人を問わず、営業所の所在地を管轄する警察署を通じて公安委員会へ「探偵業開始届出書」を提出しなければなりません。
この届出は、営業を開始する日の前日までに行うことが必要です。
提出書類には、届出書の他に履歴書、住民票の写し、欠格事由に該当しないことを誓約する書面などが含まれます。
探偵業法では、破産者や過去に禁錮以上の刑を受けた者、暴力団員などを欠格事由として定めており、それらに該当すると探偵業を営むことはできません。
届出が受理されると探偵業届出証明書が交付され、営業所の見やすい場所に掲示する義務が生じるからこそ、必要に応じてご対応ください。
必ず守るべき探偵業法で定められた義務と禁止事項
探偵業法は、探偵業者に対していくつかの義務と禁止事項を課しています。
- 依頼者と契約を結ぶ際には調査内容や料金、情報の取り扱いなどについて記載した重要事項説明書と契約書を交付し、説明する義務がある
- 調査においては人の生活の平穏を害する方法や違法な手段を用いることは固く禁じられている(住居への不法侵入や盗聴、GPSの無断取り付けなど)
- 調査によって知り得た個人の秘密を漏らしてはならない守秘義務もある
上記の規定に違反すると営業停止や行政処分、罰則の対象となるため、注意が必要です。
場合によっては、探偵が続けられなくなることもあるので、義務と禁止事項については必ず確認しておきましょう。
探偵の仕事に役立つ5つのスキルと有利な資格

探偵に国家資格は必要ありませんが、実際の調査現場では対象者を追跡するための運転技術や決定的な証拠を押さえる撮影スキルなど、多岐にわたる専門的なスキルが必要です。
また、法を遵守して調査を行うための法律知識も不可欠です。
それらに加え、保有していると就職や実務で有利に働く民間の資格も存在します。
ここでは、探偵の仕事に役立つ5つのスキルと有利な資格について詳しく解説します。
調査に不可欠な普通自動車運転免許
探偵の調査活動、特に素行調査や浮気調査において車両を使った尾行は基本中の基本です。
ゆえに、普通自動車運転免許は、事実上必須のスキルと言えます。
ただ、単に運転ができるだけでは不十分で、対象者に気づかれることなく、かつ交通ルールを遵守しながら安全に追跡する高度なドライビングテクニックが求められます。
長時間の運転に耐えうる集中力や予期せぬ事態に冷静に対応できる判断力も必要です。
現に、探偵事務所では採用の応募条件として運転免許の保有を明記しており、ペーパードライバーではなく日常的に運転に慣れていることが必須となるでしょう。
現場で証拠を押さえるための尾行・張り込み・撮影技術
探偵の調査能力の中核をなすのが、尾行、張り込み、撮影という三つの基本技術です。
対象者に気配を悟られずに追跡する尾行スキル、何時間も同じ場所で息を潜めて待ち続ける張り込みの忍耐力は、調査の成否を左右します。
そして、調査で得た情報を依頼者に報告し、時には裁判の証拠として提出するために決定的な瞬間を写真や動画に収める撮影技術も重要になります。
暗闇や遠距離、偽装カメラの使用など、あらゆる状況下で鮮明な証拠を記録する能力は日々の訓練と実践経験を通じて磨かれる専門的なスキルです。
調査報告書を作成するための基本的なパソコンスキル
調査を終えた後、経過と結果を依頼者に報告するために調査報告書を作成します。
報告書は裁判で証拠として採用されることもある重要な書類であり、客観的な事実を時系列に沿って、正確かつわかりやすく記述することが必要です。
対象者の行動記録、撮影した写真や動画を整理し、文書作成ソフトを用いて作成するため、タイピングや画像の挿入、レイアウトの調整といった基本的なパソコンスキルも必須となるのではないでしょうか。
論理的で簡潔な文章を作成する能力や、誤字脱字のない正確さも、プロの探偵として信頼を得る上で欠かせません。
法律違反を避けるための法律に関する知識
探偵の調査活動は法律と隣接しており、合法と違法の境界線を理解しなければなりません。
探偵業法はもちろんのこと、個人情報保護法やストーカー規制法、軽犯罪法や刑法など、関連する法律の知識がなければ、意図せずプライバシー侵害や住居侵入といった違法行為を犯してしまうリスクがあります。
違法な手段で収集した証拠は、裁判でその能力が否定される可能性があるだけでなく、探偵自身が法的な責任を問われることにもなりかねません。
ゆえに、常にコンプライアンスを意識し、合法的な範囲内で調査を遂行するための法律知識が求められるわけです。
スキルを証明できる民間の探偵関連資格
一部の探偵業協会や民間団体では、独自の認定資格制度を設けています。
これらの民間資格は、取得が法的に義務付けられているものではありませんが、資格を取得する過程で探偵業法や調査手法に関する知識を体系的に学ぶことができ、自身のスキルレベルを客観的に証明することが可能です。
探偵事務所への就職活動において自己PRの材料になったり、依頼者が探偵社を選ぶ際の信頼性の一つの指標になったりするため、取得しておいて損はありません。
自身の技術と知識を深める目的で、それらの資格取得を検討するのもありかもしれません。
探偵の年収はどのくらい?給料事情を徹底解説

次に、探偵の年収はどれくらいか、給料事情について見ていきましょう。
探偵事務所に勤務する場合の年収相場
探偵事務所に調査員として勤務する場合、年収は300万円から500万円程度が相場です。
未経験で入社した場合は月給20万円台からスタートするのが普通で、経験を積み、調査スキルが向上するにつれて昇給していくのが一般的となっています。
給与体系は事務所によって異なり、基本給の他に調査の成功報酬や歩合給、残業手当、車両手当などが加算され、最終的に調査チームをまとめるリーダーや管理職などの役職に就けば年収600万円以上を得ることも可能と言えるでしょう。
独立開業した場合の年収と成功のポイント
独立開業した探偵の年収は、完全に経営手腕次第であり、上限はありません。
年収1000万円を超える高収入を得る経営者も存在する一方で、依頼を安定して獲得できずに収入が不安定になるケースも珍しくありません。
探偵として独立するには調査能力はもちろん営業力と集客力が必要不可欠です。
Webサイトや広告を効果的に活用したマーケティング戦略、依頼者からの信頼を勝ち取る誠実な対応、そして経費管理などの経営ノウハウが収入を左右するのではないでしょうか。
より高収入を目指す場合は、調査以外のビジネススキルも総合的に身につける必要があります。
あなたは探偵に向いてる?求められる3つの資質とは

最後に、探偵に求められる3つの資質について見ていきましょう。
長時間にわたる調査に耐えられる気力と体力
探偵の業務は、長時間にわたる尾行や張り込みが基本となります。
真夏や厳冬の車内で何時間も対象者を待ち続けたり、徒歩で長時間追跡したりすることは日常的です。
いつ終わるとも知れない単調な時間、精神的かつ肉体的な負担に耐えうる強靭な気力と体力がなければ、仕事を続けることは困難でしょう。
また、勤務時間が不規則になりがちで、深夜や早朝からの調査も珍しくないため、体調を自己管理する能力も不可欠ではないでしょうか。
どんな状況でも冷静さを失わず、粘り強く任務を遂行できる忍耐力こそが、探偵にとって最も基本的な資質と言っても過言ではありません。
些細な変化も見逃さない鋭い観察力と洞察力
調査現場では、ごくわずかな変化が重要な手がかりとなることがあります。
人混みの中から対象者を見失わない注意力や普段とは異なる行動パターンから意図を読み解く力など、鋭い観察力が求められます。
また、集めた断片的な情報を結びつけ、物事の全体像や本質を推察する洞察力も必須です。
依頼者から話を聞く際も、言葉の裏にある感情や隠された事実を汲み取ることで調査の精度をアップできるので、常に周囲にアンテナを張り、あらゆる情報を分析的に捉える姿勢が重要です。
法律と倫理観を遵守できる強い正義感
探偵の仕事は、依頼者が困り事や悩み事を解決に導くという社会的な意義を持つ側面があるため「人を助けたい」という正義感は、仕事へのモチベーションに直結します。
正義感だけで探偵を続けている人もいるくらいです。
反面、正義感が法律や倫理を逸脱してはなりません。
依頼者の利益のためであっても、違法な手段を用いることは許されないので、法令を遵守しつつ調査対象者の人権やプライバシーにも配慮する倫理観が必要不可欠。
まずは、自身の行動に責任を持ち、常に公正な立場で職務を遂行できる誠実さが、探偵としての信頼の基盤となることを忘れないようにしてください。
まとめ

探偵になるために必須の学歴や国家資格はありませんが、探偵業法に基づき公安委員会への届出が義務付けられています。
探偵への道は、探偵事務所への就職から独立開業、専門学校での学習まで様々。
実務では尾行・撮影技術や法律知識、報告書作成のためのPCスキルなどが求められます。
また、長時間の調査に耐える精神力と体力、鋭い観察力、法を遵守する倫理観といった資質も不可欠です。
年収は勤務形態により異なり、事務所勤務で300万〜500万円、独立すれば経営手腕次第でより一層稼ぐことも可能です。
探偵は地道で厳しい面もあるものの、人の問題を解決するやりがいがある職業だからこそ、目指している人は副業などから始めてみるのも良いかもしれません。
