飲食店の開業準備におけるプレオープンとは、グランドオープン前の試験的営業のこと。
プレオープンは、本番さながらの環境で店舗運営のシミュレーションを行うことで、オペレーションの課題発見やサービスの品質向上を図る重要な機会です。
一方で、具体的にグランドオープンと何が違うのかわからない人もいるかもしれません。
そこで、この記事ではプレオープンとグランドオープンの違いから、実施する目的、メリットやデメリット、成功させるための具体的な準備やポイントまでを詳しく解説します。
INDEX
そもそもプレオープンとは？グランドオープンとの違いを解説
プレオープンは、本格的な開店前に、招待客に限定して店舗を営業することを意味します。
一方、グランドオープンは不特定多数の一般客に向けて正式に開店することです。
両者の具体的な違いは、対象となるお客様と目的にあります。
プレオープンが運営の最終確認や改善点の洗い出し、口コミやレビューを主な目的とする「リハーサル」であるのに対し、グランドオープンは本格的な営業を開始して売上を上げていく「本番」です。
なぜプレオープンを行うかというと、スタッフの不慣れなオペレーションや設備の不具合といった、実際に営業してみないとわからない問題を事前に解消し、万全の体制でグランドオープンを迎えるためと言えるでしょう。
飲食店の開業を考えている人は、まずはグランドオープンに先駆けてプレオープンでシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。
飲食店がプレオープンを実施する3つの目的
次に、飲食店がプレオープンを実施する3つの目的について見ていきましょう。
目的1：スタッフの習熟度を高めてオペレーションを円滑にする
プレオープンは、スタッフが実際の店舗設備や厨房機器を使い、お客様がいる状況で一連の業務を体験する最初の機会です。
研修で学んだ知識を実践に移し、注文を受ける、調理する、料理を運ぶ、会計をするといった流れをスムーズに行えるかを確認します。
特に、POSレジやオーダーエントリーシステムの具体的な使い方、混雑時のスタッフ間の連携など、シミュレーションだけでは習得しきれない部分を体得させるのが目的です。
本番同様、緊張感の中でも冷静に動く経験を通してスタッフの習熟度を向上させ、グランドオープン当日の混乱を未然に防ぎます。
目的2：提供する料理やサービスの品質を最終確認する
レストランやカフェなど業態を問わず、プレオープンは料理とサービスの品質を客観的に評価する最後の機会です。
試作段階では完璧だった料理も、本番の厨房で複数のオーダーを同時にこなす中で、味付けや盛り付けの質、提供スピードが安定するかを検証する必要があります。
また、お客様に料理を説明する際の言葉遣いや、メニューに関する質問への的確な応対など、接客サービスのレベルもチェックします。
結果的に、招待客からのフィードバックをもとに料理の量や味、提供方法などを微調整し、お客様の満足度を向上させるための最終確認を行うわけです。
目的3：開店前に口コミを広げてオープン後の集客に繋げる
プレオープンは、効果的な事前プロモーションの場としても機能します。
招待したお客様に料理やお店の雰囲気などをSNSで投稿してもらうことで、開店前から地域住民や潜在顧客の関心を集めることが可能です。
魅力的な写真や好意的な感想が拡散されれば「話題のお店」として認知され、グランドオープン初日からたくさんの人にご来店いただくことも夢ではありません。
例えば、地域のインフルエンサーやメディア関係者を招待すると、より広範囲への情報発信が見込めます。
まさに、プレオープンは開店情報を事前に拡大し、グランドオープン後の順調なスタートを切るための集客基盤を築くものでもあるのです。
プレオープンで飲食店が得られる4つのメリット
ここからは、プレオープンで飲食店が得られる4つのメリットについて見ていきましょう。
メリット1：接客や調理における実践的な課題を発見できる
プレオープンは、研修やシミュレーションでは見つけることが難しい、実践的な課題を洗い出せるのが魅力です。
お客様を実際に店に入れることで、特定の時間帯の注文集中による調理の遅れ、お客様とスタッフの動線がぶつかるレイアウト上の問題、メニューに関する想定外の質問への対応など、リアルな営業状況下での問題点が浮き彫りになります。
これらの課題をグランドオープン前に把握し、それぞれ具体的な対策を講じることで、開店当初からお客様にストレスを感じさせないスムーズな店舗運営を実現できるでしょう。
メリット2：厨房機器や空調など設備の不具合を事前にチェックできる
新しい店舗では、厨房機器やPOSレジ、空調、水道、ガス、電気設備などが設計通りに機能するかを確認する必要があります。
プレオープンですべての設備を本番同様に稼働させることにより、工事段階では見つからなかった不具合を事前に発見することが可能です。
例えば、複数の調理機器を同時に使用した際の電力容量の問題や客席の場所による空調の効き方のムラ、排水設備の詰まりなど、営業に直接影響するトラブルを未然に防ぐことが可能となります。
グランドオープン当日の設備トラブルという最悪の事態を回避する上で、上記の点は見逃せない魅力です。
メリット3：お客様のリアルな意見をメニューや価格設定に反映できる
プレオープンは、開発したメニューや価格設定がお客様に受け入れられるかを試す絶好の機会です。
料理の味付け、ボリューム、見た目、そして価格の妥当性について、招待客から直接的かつ率直なフィードバックを得られます。
アンケートやヒアリングを通じて「塩味を抑えた方が良い」「クオリティに対して価格が適切でない」といった具体的な意見を集め、必要であればグランドオープンまでに改善します。
上記により独りよがりではない、市場のニーズに合ったメニュー構成と価格設定を実現し、顧客満足度を向上させることが可能です。
メリット4：SNSでの拡散などオープン前のプロモーション効果が期待できる
招待客にプレオープンの様子をSNSで発信してもらうことで、費用をかけずに宣伝効果を得られる可能性があります。
美味しそうな料理の写真やおしゃれな内装、楽しんでいる様子の投稿は、見た人々の興味を引き「行ってみたい」という気持ちに繋がりやすいです。
店舗独自ハッシュタグを用意して投稿を促すなど、情報が拡散しやすい仕掛けをすることでさらに集客効果が見込めます。
結果的に、グランドオープン前から店舗の認知度と期待感を向上させ、オープン初日からの集客を後押しする強力なプロモーションとなるはずです。
知っておきたいプレオープンのデメリットと注意点
ここでは、知っておきたいプレオープンのデメリットと注意点について見ていきましょう。
デメリット1：準備不足だとネガティブな評判が広まるリスクがある
プレオープンは練習という位置づけですが、お客様にとっては通常営業と同じです。
もし料理の提供が極端に遅れたり、スタッフの対応が悪かったり、店内が清潔でなかったりすれば、招待客に強い不満を与えかねません。
一度ネガティブな体験が口コミやレビューを通じて拡散されると、グランドオープンを待たずに悪評が広まり、後の集客に深刻な影響を及ぼす恐れがあるかもしれません。
だからこそ、プレオープンだからという甘えは捨て、お客様をもてなす最低限の品質を担保できる状態まで準備を整えてから臨むことが求められます。
デメリット2：招待客向けでも食材費や人件費などのコストがかかる
プレオープンは、たとえ招待客から料金を受け取らない完全招待制で実施したとしても、食材の仕入れ費用や光熱費、スタッフに支払う人件費などのコストが発生します。
会費制にする場合でも、通常価格より割り引いて提供することが一般的であるため、売上でコストを完全に賄えるケースは稀です。
開業前の資金に余裕がない時期において、こうした追加的な支出はデメリットです。
だからこそ、プレオープンの規模や日数、料金設定を慎重に検討し、必要な予算をあらかじめ確保しておくことを忘れてはなりません。
また、当日の支払い方法のテストも兼ねて運営する準備も求められます。
デメリット3：招待客からのフィードバックを効果的に集める工夫が必要
招待客が友人や知人、関係者中心の場合、お祝いの気持ちや遠慮から、課題や改善点について本音を言いにくいという状況が生まれがちです。
「美味しかった」「頑張ってね」といった表面的な感想ばかりでは、プレオープンの目的である課題発見には繋がりません。
率直な意見を引き出すには、具体的な質問項目を設けたアンケート用紙を用意したり、評価シートを渡して各項目を5段階で評価してもらったりするなど、フィードバックしやすい仕組みを整える工夫が必要となります。
これに関しては招待時に「改善のための意見をぜひ聞かせてほしい」と目的を明確に伝えておくことで情報収集しやすくなるので、それぞれの意見を参考にできる環境を整えておきましょう。
必要に応じて、アンケート用紙も用意しておいてください。
【5ステップ】プレオープンの準備から当日までの具体的な流れ
次に、プレオープンの準備から当日までの具体的な流れについて見ていきましょう。
ステップ1：開催する目的・期間・招待する客層を明確にする
最初に「何のためにプレオープンを行うのか」という目的を具体的に設定します。
例えば「スタッフの接客スキル向上」「看板メニューの最終評価」「SNSでの認知度向上」など、目的を絞ることで後の準備内容が明確になるわけです。
次に、目的に合わせて開催期間と日時を決定すると良いです。
1日限定で実施するのか、ランチとディナーに分けて数日間行うのかなどを検討します。
最終的に、目的に合った客層をリストアップし、誰を招待するかを選定してください。
厳しい意見が期待できる同業者、情報発信力のあるインフルエンサー、ターゲット顧客層に近い友人など、戦略的に人選を行いましょう。
ステップ2：提供するメニューと料金を設定する
プレオープン当日に提供するメニューを決定します。
グランドオープン時の全メニューを提供すると、調理や接客の負担が過大になり、オペレーションが混乱する原因となるため、看板メニューやおすすめの数品に絞り込むのが一般的です。
次に、料金体系を決めます。
具体的な選択肢としては、完全招待の無料、会費制の有料、通常価格から割り引く割引価格での提供などがあるので、目的に応じて選ぶと良いです。
- 無料の場合：招待客の負担はないものの、店舗側のコストはかかる
- 有料の場合：お客様の評価が厳しくなる傾向がある
招待客との関係性やプレオープンの目的を考慮して、最適な料金を設定します。
もし無料か有料か迷ったら、割引価格で対応するのも手です。
ステップ3：招待状を作成してゲストに送付する
招待客のリストと日時が確定したら、招待状を作成し送付します。
招待状には開催日時、店舗の場所、料金（会費）、ドレスコードの有無、そして「オペレーションの練習を兼ねている」といった当日の趣旨を明確に記載しておくと安心です。
出欠の返信期日と返信方法も必ず明記し、参加人数を正確に把握できるようにします。
当日の混乱を避けるため、完全予約制であること、招待客本人以外は原則として入れないことなどを伝えておくとスムーズです。
招待方法はメールやSNSでも構いませんが、丁寧な印象を与える紙の招待状も有効な手段と言えるでしょう。
ステップ4：本番さながらの接客シミュレーションを徹底する
プレオープン当日を迎える前に、スタッフ全員で本番と同じ状況を想定したシミュレーションを繰り返し実施します。
スタッフ同士がお客様役と店員役に分かれ、入店時の挨拶、席への案内、注文の受け方、料理提供、会計、お見送りに至るまでの一連の流れを通しで練習します。
上記のロールプレイングを通じて、各スタッフの役割分担を再確認し、スタッフ間の連携をスムーズにできれば、グランドオープン時も安心です。
また、料理の提供ミスやクレームといった予期せぬトラブルが発生した場合の対応方法についても事前に話し合い、練習しておくことで、当日に慌てず対処できるようになるのではないでしょうか。
ステップ5：アンケートを用意してお客様の意見を収集する
プレオープンの目的達成に不可欠なのが、お客様からのフィードバックです。
アンケートを用意しておけば、より具体的な意見が聞けます。
質問項目は「料理の味」「量」「盛り付け」「」「価格」「スタッフの接客態度」「店の雰囲気」「清潔感」など、多角的な視点から評価してもらえるように具体的に設定します。
選択式の質問と、改善点などを自由に記述できる欄を組み合わせるとより詳細な意見を収集できるので、うまく活用すると安心。
なお、アンケート用紙は各テーブルに事前に設置しておくか、会計の際に記入をお願いするとスムーズです。
プレオープンの効果を最大化するための3つのポイント
次に、プレオープンの効果を最大化するための3つのポイントについて見ていきましょう。
ポイント1：忖度なく厳しい意見をくれる人を選んで招待する
プレオープンの価値は、どれだけ建設的なフィードバックを得られるかにかかっています。
このため、招待客には身内や親しい友人だけでなく、お世辞や遠慮なく、客観的で厳しい意見を正直に伝えてくれる人を含めることが非常に重要です。
例えば、同業の飲食店経営者や料理に精通している知人、あるいはターゲットとする顧客層に類似する一般の方を招待することで、プロの視点や消費者目線での具体的な改善点が見つかりやすくなります。
お祝いムードに流されることなく、真摯に課題を探すという目的意識を持った人選が、プレオープンの成果を左右するので、ぜひ有効活用すべきです。
ポイント2：提供メニューを限定してオペレーションの負担を軽減する
プレオープン当日は、まだオペレーションに不慣れな状態です。
そこで、提供するメニューをグランドオープン時の数分の一、例えば看板メニューやコース料理などに絞り込むことをおすすめします。
メニューを限定することで、厨房スタッフは調理工程に集中でき、料理の品質を安定させやすくなる他、ホールスタッフもメニューに関する知識を深くインプットでき、お客様へのスムーズな説明や対応が可能です。
オペレーション全体の負担が軽減されることで、一つひとつの作業に余裕が生まれ、結果として接客の質の向上にも繋がります。
ポイント3：グランドオープン後の再来店を促す特典を用意する
プレオープンに協力してくれた招待客は、お店にとって最初のファンであり、オープン後の重要な顧客になる可能性を秘めています。
その貴重な関係を一回限りで終わらせないためにも、グランドオープン後の再来店を促す仕掛けを用意すると効果的です。
例えば、アンケートへの協力のお礼として、次回来店時に使える割引券やドリンク1杯無料券、デザートサービス券などを渡します。
このような特典があることで、お客様は「また来よう」という動機付けになり、オープン後の安定した集客基盤を築く一助となるはずです。
プレオープンで見つかった課題をグランドオープン成功に活かす方法
最後に、プレオープンで見つかった課題をグランドオープン成功に活かす方法について見ていきましょう。
集まった意見を分析し改善すべき点をリストアップする
プレオープン終了後、回収したアンケート内容を速やかに整理・分析します。
「料理」「接客」「価格」「内装・設備」といったカテゴリーごとに意見を分類し、良かった点（強み）と悪かった点（弱み）を客観的に洗い出すと良いです。
なお、複数の招待客から共通して指摘された項目に関しては、優先的に対応すべき重要な課題であると判断します。
これらの分析結果をもとに、それぞれ改善が必要な点を具体的なタスクとしてリストアップし、可視化しておくとグランドオープンに向けた行動計画の土台となるでしょう。
スタッフ全員で課題を共有し具体的な改善策を検討する
作成した課題リストは、経営者や店長だけでなく、プレオープンに参加したスタッフ全員が参加するミーティングで共有します。
なぜその問題が発生したのか、現場で実際に動いていたスタッフの視点も交えながら原因を深く掘り下げ、リストアップされた課題一つひとつに対して「どうすれば解決できるか」という具体的な改善策を全員で議論すると良いです。
具体的に「料理の提供が遅かった」という課題なら「調理工程を見直す」「スタッフの配置を変更する」といった具体的なアクションプランを立てるのが良いのではないでしょうか。
改善策をもとにグランドオープンまで繰り返し練習を行う
改善策が決定したら、それをただの計画で終わらせず、グランドオープンまでの残された期間で徹底的に実践・練習します。
例えば、接客マニュアルを修正したのであれば、新しい手順に沿って何度もロールプレイングを重ねる他、調理の段取りを変更したのであれば、新しいワークフローでスムーズに動けるようになるまで反復練習を行うのが良いです。
改善策を試す中で新たな問題点が見つかったら、再度修正を加え、オペレーションの完成度をより向上させていくのもありです。
この地道な練習の積み重ねが、プレオープンでの学びが活き、万全の状態でグランドオープンを迎えられるようになります。
まとめ
プレオープンは、飲食店がグランドオープン前に実施する試験的な営業活動です。
その目的は、スタッフのオペレーション習熟度の向上、提供する料理やサービスの最終確認、そしてSNSなどを活用した事前のプロモーションにあります。
計画的に実施することで、本番営業での課題を事前に発見し、改善可能です。
一方で、準備不足は悪評に繋がるリスクがあり、招待制であっても人件費などのコストが発生することもあります。
ゆえに、成功させるためには、開催目的を明確にし、忖度のない意見をくれる招待客を選び、アンケートなどを活用して効果的にフィードバックを収集する必要があるでしょう。
そして何より、プレオープンで発見した課題を分析し、具体的な改善策を立て、グランドオープンまでに繰り返し練習することが求められるのではないでしょうか。
