チェーン店とフランチャイズの違いとは?仕組みやメリット・デメリットを解説

街でよく見かける同じ看板の店舗群を指して「チェーン店」と呼ぶことがありますが、その運営形態には大きく分けて2種類が存在します。

一つは本部が直接店舗を運営する形態、もう一つが「フランチャイズ」という仕組みです。

これらは外見上似ていても、経営の仕組みやオーナーの役割は異なる業態です。

この記事では、チェーンとは何か、そしてフランチャイズとの違いはどこにあるのか、それぞれの仕組みやメリット・デメリットを詳しく解説し、事業展開を考える上でどちらが自分に適しているかを判断する材料を提供します。

チェーン店とフランチャイズの決定的な違いは経営の主体

まずは、チェーン店とフランチャイズの決定的な違いは経営の主体にあることについて見ていきましょう。

チェーン店は本部が直接店舗を経営する

チェーン店とは、直営店やレギュラーチェーンとも呼ばれる事業形態を指します。

この方式では、本部となる企業が店舗の土地や建物を確保し、設備投資を行い、従業員の採用や教育まで、店舗運営に関わるすべての事柄を直接管理します。

各店舗の店長やスタッフは、本部に雇用された社員やアルバイトです。

そのため、店舗で得られた売上や利益はすべて本部の収益となり、逆に店舗運営で生じた損失やリスクも本部がすべて負担するのが一般的です。

本部が全店舗を直接コントロールするため、サービス品質やブランドイメージを均一に保ちやすいという特徴と言えるのではないでしょうか。

フランチャイズは加盟者が本部の看板を借りて経営する

フランチャイズとは、事業本部(フランチャイザー)と加盟店契約を結んだ個人または法人が、独立した事業者として店舗を経営する仕組みです。

加盟者(フランチャイジー)は、加盟金や保証金を本部に支払い、その対価として本部の商標、確立されたサービスや商品、経営ノウハウを使用する権利を得ます。

なお、店舗の運営資金は加盟者が用意し、雇用や労務管理も加盟者の責任で行います。

代わりに、加盟者はブランドの知名度や確立されたビジネスモデルを活用できるので、未経験からでも事業を始めやすいというわけです。

一方、本部は経営指導やサポートを提供する見返りとして、加盟者から毎月ロイヤリティ(対価)を受け取るからこそ、契約内容はよく確認しておく必要があるでしょう。

【5つの観点】チェーン店とフランチャイズを徹底比較

チェーン店とフランチャイズの違いを理解するには、5つの観点が重要です。

比較する項目は「本部と店舗の資本関係」「店舗運営における自由度」「働くスタッフの雇用主」「事業拡大のスピード感」「出店できるエリアの範囲」の5つ。

ここからは、それぞれ比較すべき点について詳しく解説します。

比較1:本部と店舗の資本関係

チェーン店(直営店)の場合、店舗は本社の組織の一部門という位置づけであり、本部と店舗は一体のものです。

出店に関わる資金はすべて本部が拠出するため、両者には直接的な資本関係が存在します。

一方、フランチャイズにおいては本部と加盟店はそれぞれが独立した別個の事業者です。

両者はフランチャイズ契約によって結ばれていますが、資本的な結びつきはありません。

加盟店は自己の資金で事業を立ち上げ、経営責任も自身で負います。

上記のような資本関係の有無は、事業のリスクとリターンの所在を明確に分ける重要なポイントとなるでしょう。

比較2:店舗運営における自由度

両者には、店舗運営における自由度にも違いがあります。

チェーン店では、本部の方針が絶対であり、全店舗で提供する商品やサービス、価格、営業時間、キャンペーン内容などが厳格に統一されており、店長の裁量で独自の運営を行うことは基本的に認められません。

対照的に、フランチャイズチェーンでは加盟店オーナーが経営者なので、一定の裁量が与えられているのが一般的です。

もちろん、ブランドイメージや品質を維持するために、本部が作成した運営マニュアルを遵守する義務があり、完全に自由というわけではありません。

独自のサービスを展開したり、指定外の商品を扱ったりすることは通常許可されません。

比較3:働くスタッフの雇用主

従業員の雇用主が誰であるかという点も、両者の明確な違いです。

チェーン店の場合、店長をはじめとする店舗で働くすべてのスタッフは、本部企業が直接雇用する従業員であるため、給与の支払いや社会保険の手続き、労務管理といった責任はすべて本部が負います。

一方、フランチャイズ店では、店舗スタッフを雇用するのは加盟店のオーナーです。

オーナー自身が求人活動を行い、採用面接をし、雇用契約を結びます。

スタッフの給与計算やシフト管理、教育などもオーナーの業務となり、経営者としての責任はより重大なものとなるでしょう。

比較4:事業拡大のスピード感

事業拡大のスピードは、フランチャイズチェーンの方が圧倒的に速い傾向にあります。

チェーン店(直営店)展開では、本部が全ての出店コストを負担し、店長候補となる人材を自社で育成する必要があるので、一度に多くの店舗を増やすことが難しく、拡大ペースは比較的緩やかです。

一方、フランチャイズチェーンは事業者の自己資金を活用して出店を進められます。

結果的に、本部の資金的負担を抑えながら店舗網を拡大することが可能です。

市場でのシェアを迅速に獲得したい企業にとって、上記のようなスピード感は魅力と言えるのではないでしょうか。

比較5:出店できるエリアの範囲

出店可能なエリアの範囲においても違いは顕著と言えるでしょう。

チェーン店(直営店)の場合、本部の管理が行き届く範囲での出店が基本となるため、本社から遠く離れた地域への展開には物理的な制約が生じることがあります。

スーパーバイザーの巡回や商品の配送、人材管理などの面で効率が悪くなるためです。

対して、フランチャイズ方式では土地の事情に詳しい現地のオーナーを募集することで、本部が直接管理しにくい遠隔地や地方のニッチなエリアにも出店網の拡大が可能です。

結果的に、全国的なブランド認知度を効率的に拡大できます。

まずは、それぞれの違いについて比較検討してみてはいかがでしょうか。

フランチャイズ方式で開業するメリット

ここからは、フランチャイズ方式で開業するメリットについて見ていきましょう。

未経験からでも挑戦しやすい充実したサポート体制

フランチャイズチェーンのメリットの中でも特に大きいのが、本部による充実したサポート体制です。

多くのフランチャイズ本部では、加盟者向けに体系的な研修プログラムを用意しており、開業前に店舗運営に必要な知識や技術、接客スキルなどを基礎から学ぶことができます。

開業後も、経営の専門家であるスーパーバイザーが定期的に店舗を巡回し、売上向上のためのアドバイスや課題解決のサポートを提供してくれます。

結果的に、経営経験がない人でも安心して事業をスタートし、運営を軌道に乗せることが可能です。

トラブル発生時の相談窓口が用意されているのも、心強い点と言えるでしょう。

本部の知名度を活かして集客できる

既に社会的に広く認知されているブランドの看板を使って商売を始められる点は、集客面で非常に有利です。

個人で独立開業する場合、まず店の名前を覚えてもらい、信頼を勝ち取るまでに相当な時間と労力がかかりますが、有名なフランチャイズに加盟すれば、開店初日からブランドのファンやなじみ客の来店が見込めます。

また、テレビCMや全国規模のキャンペーンなど、本部が展開する大規模な広告宣伝活動の恩恵を受けることができるため、個店で多額の広告費をかけることなく、安定した集客を実現しやすくなるのではないでしょうか。

仕入れやマーケティングを本部に任せられる

個人経営では負担となる仕入れやマーケティング活動を本部に任せられる点も利点の1つと言えるでしょう。

本部は全加盟店分の原材料や商品を一括で大量に仕入れるため、スケールメリットを活かして個別に仕入れるよりも安価に調達できます。

結果的に、加盟店は原価を抑え、一定の収益性を確保可能です。

また、市場調査に基づいた新商品の開発や販売促進策の企画、チラシやPOPなどの販促ツールの作成も本部が主導して行うので、オーナーは日々の接客や店舗管理といった現場の業務に集中できるのも魅力ではないでしょうか。

フランチャイズ方式で開業するデメリット

ここでは、フランチャイズ方式で開業するデメリットについて見ていきましょう。

経営の自由度が低くオリジナリティを出しにくい

フランチャイズ経営のデメリットは、運営の自由度が低い点です。

加盟店は、本部が築き上げたブランドイメージと事業モデルを維持するため、マニュアルに定められた運営方法を厳守する義務を負います。

提供する商品やサービス、価格設定、店舗の内外装、営業時間など、いくつもの事柄が細かく規定されているので、経営者として自分のアイデアや創意工夫を店舗運営に反映させたいと考えている人にとっては、窮屈に感じられるかもしれません。

実際に、独自のキャンペーンを実施したり、地域特性に合わせた品揃えをしたりといった柔軟な対応が難しい点に対して、窮屈に感じる人が珍しくありません。

毎月ロイヤリティを支払う必要がある

フランチャイズに加盟すると、ブランドの使用権や経営ノウハウの提供を受ける対価として、毎月本部にロイヤリティを支払わなければなりません。

ロイヤリティの形式は、売上の数パーセントを支払う「売上歩合方式」や、毎月決まった額を支払う「定額方式」など、本部によって様々です。

店舗の売上が順調なときは問題ありませんが、売上が伸び悩んだり、赤字になったりした場合でも、この支払いは発生します。

そのため、ロイヤリティの負担が経営を圧迫する要因となる可能性も……。

まずは、契約前にロイヤリティの算出方法や支払い条件を正確に把握しておかなければなりません。

本部のブランドイメージが悪化すると影響を受ける

フランチャイズ経営は、本部のブランド力に依存しています。

ゆえに、本部企業や他の加盟店が不祥事を起こしたり、SNSなどで悪い評判が広まったりしてブランド全体のイメージが損なわれた場合、自分の店舗には全く落ち度がなくても、客足が遠のき売上が減少するというリスクがあります。

これは、自店の努力だけではコントロールすることが不可能な外部要因です。

一つの店舗の問題が、その他のチェーン全体の問題として捉えられてしまう可能性があることを理解しておくことが何よりも重要。

ブランドの選択にあたっては、企業の信頼性やリスク管理体制も慎重に見極めるべきです。

チェーン展開(直営店)のメリット

ここからは、チェーン展開(直営店)のメリットについて見ていきましょう。

全店舗で均一なサービスを提供しやすい

レギュラーチェーンのメリットの一つは、サービス品質の均一化を図りやすい点です。

すべての店舗が本部の直接的な指揮命令系統の下にあるため、経営理念や運営方針を現場の末端まで浸透させることが可能です。

従業員は全員が本部の社員として採用され、統一された研修プログラムを受けるため、どの店舗を訪れても顧客は一貫したレベルの接客やサービスを受けることができます。

結果的に、ブランドに対する顧客の信頼感を醸成し、安定した顧客満足度を維持することが容易となります。

店舗の利益がすべて本社の収益になる

レギュラーチェーンでは、各店舗が生み出した利益は、ロイヤリティとして一部を受け取るのではなく、その全額が本社の収益となります。

収益性が期待できる人気店を複数運営できれば、莫大な利益を本社にもたらし、さらなる事業拡大や新規事業への投資原資とすることが可能です。

フランチャイズ方式に比べて、一店舗あたりの収益性が得やすいビジネスモデルの場合、直営店展開の方が企業全体の利益を最大化しやすいです。

ただ、裏を返せば店舗が赤字になった場合の損失もすべて本社が被ることを意味しており、ハイリスク・ハイリターンな側面も持ち合わせています。

ブランドイメージを維持・管理しやすい

レギュラーチェーンは、ブランドイメージの構築と維持において強みを発揮します。

本部が全店舗の運営を完全にコントロールできるため、店舗デザインのコンセプト、商品の品質基準、従業員の接客態度、広告宣伝のメッセージなど、ブランドに関わるあらゆる要素を統一し、一貫性を持たせることが可能です。

加盟店の意向や運営能力のばらつきに左右されることがないので、本部が意図した通りのブランドの世界観を顧客に提供し続けられます。

結果的に、長期的な視点でブランド価値を維持し、顧客ロイヤリティを醸成していく上で有利に働くはずです。

チェーン展開(直営店)のデメリット

ここでは、チェーン展開(直営店)のデメリットについて見ていきましょう。

出店にかかる費用はすべて自己負担となる

チェーン店(直営店)を新たに一店舗オープンするためには、莫大な初期投資が必要です。

物件の取得や賃貸契約にかかる費用、内外装の工事費、厨房設備や什器の購入費、そして開業当初の人件費や広告宣伝費など、すべての費用を本部が負担しなければなりません。

フランチャイズのように加盟者の資金を活用できないため、多店舗展開を進めるには巨額の自己資金、あるいは金融機関からの大規模な借り入れが欠かせません。

この重い財務的負担は、企業の成長スピードを制限する要因となります。

人材の確保と育成にコストがかかる

チェーン店を運営するためには、優秀な人材の確保と育成が欠かせません。

店長や店舗スタッフはすべて本部の従業員となるため、採用活動から始まり、理念や業務内容を教えるための研修、その後のキャリアパスの提示まで、一連の人事管理を本部が責任を持って行う必要があります。

店舗数が増えれば増えるほど、必要となる人材の数も増加し、採用コストや研修コストも膨らんでいくのが一般的です。

特に、店長として店舗運営を任せられるレベルの人材を育成するには、多大な時間と費用を要し、これが事業拡大のボトルネックになることも珍しくありません。

スピーディーな店舗展開が難しい

出店コストと人材育成コストをすべて本部が自前で賄う必要があるため、チェーン店(直営店)方式でのスピーディーな店舗展開は困難です。

出店計画は、本社の財務状況や人材の育成スピードに大きく左右されることになります。

市場に新たなビジネスチャンスが生まれた際に、競合他社に先んじて一気に店舗網を広げ、市場シェアを獲得するといった戦略を取るには不向きな側面があります。

結果的に、成長戦略として直営店展開とフランチャイズ展開を組み合わせ、両者の利点を活かすハイブリッド方式を採用する企業も珍しくないです。

あなたはどっち?フランチャイズ経営が向いている人の特徴

次に、フランチャイズ経営が向いている人の特徴について見ていきましょう。

経営のノウハウを一から学びたい人

事業経営の経験は全くないけれど、いつかは自分の力で商売をしたいと考えている人にとって、フランチャイズチェーンへの加盟は魅力的な選択肢の一つです。

加盟すると、本部が長年の経験で培ってきた成功のノウハウを、研修やマニュアルを通じて体系的に学ぶことができます。

商品知識やオペレーションはもちろん、売上管理や人材育成、顧客対応といった経営の根幹に関わる部分まで、実践的に習得する機会が得られます。

いわば、お金をもらいながら経営塾に通うようなもの。

将来の完全な独立に向けた第一歩として、非常に価値のある経験を積むことが可能です。

確立されたブランドの下で安定した経営を目指す人

ハイリスク・ハイリターンな挑戦よりも、失敗のリスクをできるだけ抑え、安定した事業運営を望む人にはフランチャイズ経営が向いています。

ゼロから個人で店を立ち上げた場合、知名度がないため最初の顧客を獲得するまでに苦労し、経営が軌道に乗るまで時間がかかることが少なくありません。

一方、既に多くの人に知られ、信頼されているブランドの看板を掲げれば、開店当初から安定した集客が見込めるかもしれません。

提供する商品やサービスも市場で実績のあるものなので、大失敗は避けやすいです。

つまり、確立されたシステムの上で、着実に収益を上げていきたい堅実なタイプの人に適しているといえるでしょう。

ルールに沿って効率的に運営するのが得意な人

フランチャイズチェーンの運営では、ブランド全体の統一性を保つため、本部が定めたマニュアルやルールを忠実に守ることが求められます。

独自のアイデアで店を自由に経営したいという創造性のあるタイプの人よりは、むしろ決められた枠組みの中で、示された手順通りに物事をこなし、効率的に成果を出すことが得意な人に向いていると言えるのではないでしょうか。

成功が実証されている「勝ちパターン」に従うことで、無駄な試行錯誤をせずに済み、日々の店舗運営に集中できるので、決められたことをきっちり守る真面目さや誠実さを持っている人におすすめです。

混同しやすい用語との違いも解説

最後に、混合しやすい用語との違いも見ていきましょう。

「直営店」と「フランチャイズ店」の違い

直営店とは、当記事で説明してきたチェーン店(レギュラーチェーン)と同じ意味の言葉。

本部となる企業が、自社の資本と人材を用いて直接運営している店舗を指します。

一方、フランチャイズ店は、本部と契約を結んだ独立した事業主(オーナー)が運営する店舗のことです。

外から見ただけでは両者の区別はつきにくいですが、経営の主体が「本部」なのか「加盟オーナー」なのかという点で根本的に違うのが特徴です。

なお、一つのブランドが直営店とフランチャイズ店の両方を展開するケースも見られます。

複数の独立店が連携する「ボランタリーチェーン」とは

ボランタリーチェーンは、レギュラーチェーンやフランチャイズチェーンとは異なる、第三のチェーン形態です。

ボランタリーとは「自発的な」という意味で、同じような課題を抱える独立した小売店同士が、経営の独立性を保ちながら自発的に連携し、組織を形成するものを指します。

主な目的は、共同で商品を仕入れることで仕入れコストを削減したり、共同でチラシを作成して販促活動を行ったり、経営ノウハウを共有したりすることです。

結果的に、大手チェーンに対抗しうる競争力が得られるわけです。

本部と加盟店という上下関係ではなく、加盟店同士が対等な立場で協力し合う点が特徴で、チェーンとは上記のように様々な形が存在すると言っても過言ではありません。

まとめ

チェーン店とフランチャイズの最も本質的な違いは、店舗の「経営主体」が誰であるかという点にあります。

チェーン店(直営店)は本部企業が直接経営し、全店舗で均一なサービスを提供できる一方、出店コストが重くスピーディーな拡大が難しいのが特徴です。

対照的に、フランチャイズチェーンは独立したオーナーが本部のブランドとノウハウを活用して経営する仕組みです。

未経験者でも開業しやすい反面、経営の自由度があまりなく、ロイヤリティの支払い義務が生じるのがネックとされています。

ただ、どちらの形態が優れているというわけではなく、それぞれにメリットとデメリットが存在すると言えるでしょう。

事業を始めるにあたっては、両者の違いを正しく理解し、自身の事業経験や資金力、目指す経営スタイルなどを総合的に考慮しながら最適な方法を選択してみてはいかがでしょうか。

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#カケハシ 編集部

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