個人事業主の住所変更手続きに関する解説を行います。
引越しをした際、税務署や自治体への各種手続きが必要となります。
個人事業主の住所変更をスムーズに進めるため、手続きの全体像から必要書類、e-taxを活用したオンライン申請の方法まで具体的に説明していきます。

INDEX
個人事業主が住所変更した際に行うべき手続きの全体像
引っ越しを伴う住所変更時には、多岐にわたる行政手続きが発生します。国民健康保険や国民年金は転居後14日以内など、それぞれに提出期限が定められているため、期限を意識して手続きを進めることが重要です。会社員の場合は、会社が代行してくれる手続きも多くあります。
全体像を把握することで、抜け漏れなくスムーズに対応できます。
【ケース別】税務署への住所変更手続きと必要書類

税務署へ提出する書類は、引越しの状況によって異なります。
国税庁の定めに従い、自身の状況に合わせた提出書類を準備し、正しい提出先へ提出することが重要となります。
どこにどのような届出書や添付書類を出せばよいか、具体的なケースごとに書類を整理します。
ケース1:自宅兼事務所の住所が変わった場合の手続き
自宅兼事務所として利用している物件から引越しをする場合、納税地変更となります。
2023年以降の税制改正により、「所得税・消費税の納税地の異動や変更に関する届出書(異動届)」の提出は原則として不要となりました。
変更後の住所は、次回の確定申告書に変更後の納税地を記入することで手続きが完了します。
異動届の書き方や記入例を調べて準備していた場合でも、現在は確定申告書への記載のみで対応可能です。
ケース2:事務所や店舗のみの住所が変わった場合の手続き
自宅の住所は変わらず、事業所や店舗のみを別の場所へ移転した場合の手続きを説明します。
納税地自体に変更がないため、納税地の異動に関する届出は必要ありません。
その代わり、管轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出し、事業所の移転を報告する形となります。
この届を出す際は、新たに設けた事業所の所在地と移転の旨を明記して提出します。
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ケース3:納税地の管轄税務署が変わる場合の手続き
移転先が同一市内であっても、納税地の管轄税務署が変わる場合があるため注意が必要です。
管轄税務署が変更になった場合でも、基本的には確定申告書へ新しい住所を記載することで対応できます。
また、個人事業税に関する手続きとして、都道府県の県税事務所へ「事業開始(廃止・変更)申告書」の提出が求められます。
各自治体によって期日や様式が異なるため、移転先の県税事務所のウェブサイト等で確認を行ってください。
振替納税を利用している場合に必要な追加手続き
所得税や消費税を口座振替で納付する振替納税を利用している場合、管轄税務署が変わるとそのままでは引き継がれません。
新たな管轄税務署に対し、改めて口座振替依頼書を提出するなどの手続きが必須となります。
役所に行かずに完結!e-Taxでのオンライン申請手順を解説
手続きを効率化するためには、ネットを利用したオンライン申請が便利です。
自宅にいながらパソコンやスマートフォンを通じて申請を完了できます。
窓口の開庁時間を気にせず手続きを進められるため、引越し直後の多忙な時期に非常に有効な手段といえます。
e-Taxでの申請前に準備するもの
e-Taxを利用するためには、事前に必要なものをいくつか揃えなければなりません。
最も重要なのは、電子証明書が組み込まれたマイナンバーカードです。
また、マイナンバーカードを読み取るためのICカードリーダライタ、あるいは読み取り対応のスマートフォンを準備します。
さらに、マイナポータルと連携させておくことで、各種情報の入力補助や管理が円滑に行えるようになります。
e-Taxソフトを使った具体的な申請ステップ
e-Taxソフトを活用した具体的なやり方を解説します。
パソコンを利用する場合は、Web版のe-Taxソフトにログインし、必要な届出書を選択して作成と送信を行います。
スマートフォンを利用する場合、専用アプリをダウンロードしてスマホの画面案内に沿ってマイナンバーカードを読み取らせることで手続きを進められます。
画面上の指示に従って変更内容を入力し、電子署名を付与してデータを送信すれば完了します。
税務署以外にも必要!住所変更に伴う諸手続き
引越しの際は、税務署以外にどこでどのような手続きをすべきか把握しておくことが求められます。
事業の形態や加入している保険によって、自治体や年金事務所など複数の機関への連絡が必要となります。
国民年金・国民健康保険の住所変更手続き
引越し先の市区町村役場にて、国民年金および国民健康保険の住所変更を行います。
転出届と転入届を提出する際、併せて窓口で手続きを行うのが一般的です。
これらは個人事業主自身の社会保険に関する重要な手続きであり、加入情報の更新が遅れると保険証が使えなくなる等の支障が出るため、転居後速やかに完了させてください。
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従業員を雇用している場合の社会保険手続き
会社組織であるか個人事業主であるかを問わず、従業員を雇用している場合は労働保険や社会保険の所在地変更手続きが発生します。
労働基準監督署やハローワークへ労働保険に関する名称・所在地等変更届を提出します。
また、年金事務所に対しても健康保険・厚生年金保険の適用事業所所在地変更届を提出し、従業員に影響が出ないよう適切に対応します。
許認可が必要な事業の変更手続き
飲食店や美容室、建設業など、事業運営に許認可が必要な業種では、所轄の保健所や警察署、都道府県庁での変更手続きが不可欠です。
新しい所在地でも引き続き事業を行うための要件を満たしているか確認を受ける場合もあります。
屋号を変更した場合も、各許認可機関への届出が必要になるケースが多いため、事前に移転先の管轄窓口へ要件を問い合わせておくことを推奨します。
その他(銀行口座・クレジットカード等)の変更手続き
事業用に使用している銀行口座やクレジットカードの住所変更も忘れずに行います。
重要な書類や更新カードが届かなくなる事態を防ぐため、各金融機関のウェブサイト等から早めに変更を済ませてください。
さらに、継続的な取引先へは、移転のお知らせを送付します。
請求書や納品書に記載された住所と実際の所在地が異なると、経理処理の際に混乱を招く原因となります。
住所変更手続きを忘れるとどうなる?提出期限と注意点
行政機関への届出には、それぞれ提出期限が定められている場合があります。
期限を過ぎて忘れた状態が続くと、重要な通知が届かないなど様々な不都合が生じます。
いつまでに手続きを済ませるべきか事前に確認しておいてください。
各届出書の提出期限はいつまでか確認しよう
各種手続きは、引越し後いつまでに完了させるべきかスケジュールを立てて進めます。
住民票の異動や国民年金・国民健康保険の手続きは、転居後14日以内に行う規定となっています。
都道府県税事務所への事業所変更の届出は、自治体によって異なりますが概ね10日〜1ヶ月以内と定められていることが多い傾向にあります。
それぞれの提出期限を事前にリストアップし、期限超過を防ぎます。
手続きを怠った場合に発生するリスク
住所変更の連絡を怠ると、税務署からの確定申告に関する重要なお知らせが旧住所へ送付されてしまいます。
また、振替納税の引き継ぎ手続きを忘れて口座引き落としが行われず、意図せず延滞税が発生するリスクも存在します。
青色申告を行っている事業者は、帳簿の保存や正しい手続きが求められるため、情報の未更新は避けるべきです。
白色申告の場合でも同様に、納税地情報の正確な管理は義務付けられています。
引越し費用は事業の経費として計上できるのか?
引越しにかかる費用のうち、事業に関連する部分は経費として計上できる可能性があります。
自宅兼事務所の引越しであれば、事業専用スペースの面積割合などで按分し、妥当な金額を事業の費用に算入します。
賃貸契約における仲介手数料や引越し業者の代金なども同様の基準で按分計算を行ってください。
経費に計上するためには、見積書や領収書などの客観的な証拠書類の保存が必須となります。
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個人事業主の住所変更に関するよくある質問
個人事業主が引越しをする際に抱えやすい疑問点をまとめます。
2023年の税制改正内容や、freeeをはじめとするクラウド会計ソフトでの設定変更などに関するよくある質問に回答していきます。
住所変更の手続きを忘れてしまった場合の対処法は?
気づいた時点で速やかに各機関へ変更の届出を行ってください。
特にインボイス登録事業者の場合、適格請求書発行事業者の登録簿に変更が生じるため、管轄の税務署へ遅滞なく変更届出書を提出する必要があります。
引越しをしたら、開業届は必ず再提出が必要ですか?
引越しに伴う開業届の再提出は、納税地が変わるかどうかに応じて異なります。
自宅兼事務所の移転など、事務所や事業所の移転によって納税地が変わる場合は、原則として開業届の再提出が必要です。
ただし、事務所の移転を伴わず、自宅のみ引っ越すなど、納税地が変わらない場合は開業届の再提出は不要です。
納税地が変わらない場合は、確定申告書に新住所を記載することで対応可能です。
納税地は変更せず、事務所だけ移転した場合の手続きは?
納税地は変更せず事業所のみを移転した場合、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出し、事業所移転の事実を報告します。
2023年1月1日以降、個人事業主が転居などにより納税地が変わった場合でも、確定申告書に新しい住所を記載することで、納税地の変更手続き(「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」の提出)は必須ではなくなりました。
ただし、事業所移転の際は「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する必要があります。
まとめ
個人事業主の引越しに伴う手続きは、税務署から地方自治体、年金事務所まで多岐にわたります。
2023年の法改正により税務署への納税地異動届出は原則不要となりましたが、振替納税の手続きや社会保険関連の更新など、依然として対応すべき事項は残されています。
オンラインでの電子申請や郵送を活用し、期限内に各手続きを終わらせるよう準備を進めてください。
